改訂新版 世界大百科事典 「十王経」の意味・わかりやすい解説
十王経 (じゅうおうきょう)
Shí wáng jīng
中国および日本でつくられた,民俗仏典の一つで,諸本がある。唐の蔵川の《仏説地蔵菩薩発心因縁十王経》や,《仏説預修十王生七経》は,その代表的なもの。死後,主として中陰期間中に,亡者が秦広王,初江王,宋帝王など,10人の王の前で,生前の罪業を裁かれる次第を述べ,来世の生所と地蔵菩薩の救いを説いて,遺族の追善供養をすすめるもの。期間はさらに百ヵ日,一周忌,三周忌に延長される。中世の中国で,泰山信仰や,冥府信仰が流行するのに伴って,仏教側で考えだしたものらしい。敦煌写経のうちに,図絵を伴う本があり,宋代になると,独立の十王図が描かれ,三途の川や,賽の河原伝説は,日本でさらに発展する。
執筆者:柳田 聖山
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報