改訂新版 世界大百科事典 「南唐二陵」の意味・わかりやすい解説
南唐二陵 (なんとうにりょう)
Nán Táng èr líng
中国,五代十国の南唐の始祖,烈宗李昪(りべん)(888-943)の欽陵と,第2代,元宗李璟(りけい)(916-961)の順陵をいう。南京市の南郊,江蘇省江寧県東善鎮,高山の南麓の尾根を利用してつくった円墳。1950-51年に南京博物院が発掘。墓室は2陵とも墓門,前室,中室,後室からなる。欽陵の墓室は全長21.48m,最大幅10.45m,前・中室は塼(せん)で築き,ドーム式の天井を設け,左右に明器類をいれる側室を付設。後室は板石で築き,舟底天井として中央奥に棺台をつくり,左右にそれぞれ3側室を設ける。墓室内は家屋内部の状況に模して装飾され,柱や斗栱(ときよう)をあらわし,また唐草文や星宿図を描き,守護の武人や竜などを浮彫にする。順陵の墓室は全長21.9m,最大幅10.12m,構造を欽陵と同じくする塼室墓。2陵とも盗掘を受けていたが,磁器,陶俑,玉や石の哀冊(あいさく)(天子生前の功徳をたたえた韻文)などが残っていた。墓室構造と副葬品には唐代と宋代との過渡期的な様式が示されており,まだ調査されていない唐代陵墓の構造を推定する手がかりになっている。
執筆者:町田 章
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報