日本大百科全書(ニッポニカ) 「卞之琳」の意味・わかりやすい解説
卞之琳
べんしりん / ピェンチーリン
(1910―2000)
中国の詩人。江蘇(こうそ/チヤンスー)省海門県出身。1929年上海(シャンハイ)の浦東中学を終え、北京(ペキン)大学英文科に入学、33年卒業。『水星』主編。抗日戦争中、四川(しせん/スーチョワン)大学講師を経て、延安(えんあん/イエンアン)の魯迅(ろじん)芸術学院講師。昆明(こんめい/クンミン)の西南連合大学助教授。戦後、天津(てんしん/ティエンチン)の南開大学教授。47年オックスフォード大学に留学。49年帰国、北京大学教授。78年中国社会科学院外国文学研究所研究員。その詩はモダニズムに属し、感覚的、心象的で、極端に圧縮したことばの配列によってさまざまな情緒を表現しようとした。文章は難解である。詩集に『三秋集』(1933)、『魚目(ぎょもく)集』(1935)、『慰労信集』(1940)など。エッセーに『人と詩』(1984)、翻訳にジッドの『狭き門』(1943)などがある。
[秋吉久紀夫]
『秋吉久紀夫訳編『卞之琳詩集』(1992・土曜美術社出版販売)』▽『秋吉久紀夫訳編『精選中国現代詩集――変貌する黄色の大地』(1994・土曜美術社出版販売)』