卵巣囊腫(読み)らんそうのうしゅ(英語表記)ovarian cystoma

改訂新版 世界大百科事典 「卵巣囊腫」の意味・わかりやすい解説

卵巣囊腫 (らんそうのうしゅ)
ovarian cystoma

良性卵巣腫瘍の一つで,卵巣の表面をおおっている上皮(表層上皮)が腫瘍化し,腫瘍を切り割ったとき,割面に充実部がなく,囊胞性で,その中に,水様またはゼラチン様,あるいは古くなった血液がたまった囊胞性腫瘍をいう。卵巣腫瘍の約2/3を占め,30~40歳代に好発する。囊腫の壁は灰白色,平滑であるが,一部,腫瘍細胞が乳頭状に増殖し,良・悪性境界領域の腫瘍(境界悪性腫瘍borderline tumor)や腺癌になることもある。しかし,その頻度は低く,10~20%くらいといわれている。一般に一側の卵巣に発生するが,5~10%は両側に発生する。

 囊腫の大きさはさまざまで,骨盤腔から腹腔全体を占めるような巨大な腫瘤を形成するものまである。一般に囊腫壁は薄く,割面が蜂巣様に区切られているかいないかによって多房性,単房性に分けられる。囊腫は病理組織学的に囊胞腺腫というが,構成する腫瘍細胞や内容液の種類によって,国際的に四つに分類されている。すなわち,漿液性,粘液性,類内膜,明細胞の四つの囊腫で,漿液性の内容液は水様,粘液性はゼラチン様,類内膜は古くなった血液が貯留している。このなかで粘液性囊腫が最も大きくなる傾向を有し,一般に腫瘍の直径は15~20cm,重量2000~4000gに達し,多房性になることが多い。

 症状は卵巣腫瘍の場合と同様であるが,大きくなったものを触診すると,硬度は軟らかく,弾力性に富む。超音波断層やCT検査により,術前に比較的容易に診断できる。治療としては,腫瘍を切除する。
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世界大百科事典(旧版)内の卵巣囊腫の言及

【腹痛】より

…また下痢になることはまれで,かえって便秘に傾くことが多い。虫垂炎
[卵巣囊腫の捻転,子宮外妊娠の破裂]
 卵巣囊腫の捻転は,突然に出現する下腹部痛で始まり,実際には虫垂炎とよく似た症状であるから,女性の場合,虫垂炎が疑われるときは必ず考慮しておかねばならない。一方,子宮外妊娠の破裂は,突発する下腹部の激痛とともにショック症状,貧血症状が著しく,性器出血などがある。…

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