日本大百科全書(ニッポニカ) 「厚歯二枚貝」の意味・わかりやすい解説
厚歯二枚貝
あつばにまいがい
中生代後期ジュラ紀から白亜紀末期にかけて栄えたサンゴに似た特異な形態の海生二枚貝の通称。分類上、異歯亜綱ヒプリテス目ヒプリテス上科に属し、左殻に肥厚した歯をもつことからこの名がつけられた。著しく不等殻で、管状、円錐(えんすい)形の右殻と、これを蓋状(がいじょう)に覆う扁平(へんぺい)、小形の左殻からなる。形態や産状から、暖かい浅海(大陸棚内側のラグーン)の地物に固着して生活していたと考えられ、しばしば礁を形成した。おそらく光合成藻(そう)類を体内に共生させていたと考えられ、現世のサンゴ類の生態的地位を占有していたと思われる。後期ジュラ紀から白亜紀にわたるテチス海域の礁性堆積(たいせき)物(ウルゴン相とよばれる)に多産し、日本でも四国や九州の上部ジュラ系~最下部白亜系の鳥巣式石灰岩(とりのすしきせっかいがん)や岩手県や北海道の下部白亜系から産する。進化速度は速く、標準化石、示相化石として有効である。
[棚部一成]