地理的に広い地域にかけてある特定の地質時代を示す化石をいう。示準化石ともいう。ある一定の層準にのみ発見される化石属または化石種により代表される。生物の種類としては、以下のことが望まれる。
(1)ある時代に繁栄して個体数が多く、したがって化石としても発見される頻度が高いこと
(2)短期間に広く分布できる生活型をもつこと
(3)生存期間が短く進化速度が速いこと
(4)局地的環境条件に支配されにくいこと
したがって、(1)についていえば、たとえば古生代の三葉虫類、中生代のアンモナイト類、新生代の哺乳(ほにゅう)類などがあげられる。(2)は、たとえば海流によって汎(はん)世界的に運ばれる浮遊性有孔虫や、幼期に浮遊性で海流により広域に散布されるアンモナイト類、および移動力の大きい哺乳動物などがあげられる。(3)は、同じアンモナイト類であっても、系統樹の根幹にあるものよりも枝部にあるもの、時代の古いものよりも新しいもの、それと、開けた大洋というような環境にすむものよりも、ある程度閉鎖的な環境にすむもののほうが進化速度が速いとされている。(4)は、生物の種類によって適応している環境が違うので、その分布は多少なりとも環境条件の規制を受けるが、種類によって局地的条件に強く支配される種類は標準化石としてあまりよくない。たとえば二枚貝の産出は岩相のいかんにかなり影響される。
日本とヨーロッパというように遠隔の地に発達する地層を標準化石を用いて対比することができるし、また標準化石によって時代未詳の地層の地質時代を決定できる(化石による地層同定の法則)。日本でも、有孔虫、放散虫、ナンノプランクトン、コノドントなど微化石が標準化石として活用されている。標準化石を決めるには、いろいろな化石を用いて各地で化石層序学的分帯を行って、それぞれの産出範囲を求め、それらを総合して各種の生存帯をたて、とくに短い生存帯を示す種類ないしは複数の生存帯の組合せから識別できる帯(群集帯)を特徴づける種類を標準化石と決める。普通、同一系統の生物の種よりも属、属よりも科と分類単位が大きいほど指示する時代の幅が長い。群集帯を特徴づける化石でも、その産出がその帯に限られるものではないことが多い。また、それぞれの古地理区を特徴づける化石は指区化石とよばれ、ゴンドワナ大陸(現在の南アメリカ、アフリカ、インド、南極、オーストラリアなど)のグロッソプテリスGlossopterisやガンガモプテリスGangamopterisはその例である。
[小畠郁生]
『日本古生物学会編『化石の科学』(1987・朝倉書店)』
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…産出した地層の対比を行い,さらにその地質年代を決定するのに用いられる化石。標準化石ともいう。示準化石としては,通常化石属ないし化石種を指すことが多い。…
※「標準化石」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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