日本大百科全書(ニッポニカ) 「鳥ノ巣動物群」の意味・わかりやすい解説
鳥ノ巣動物群
とりのすどうぶつぐん
Torinosu fauna
西南日本外帯に点々と分布する鳥ノ巣石灰岩に特徴的にみられる化石動物群。模式的に露出する高知県高岡郡佐川(さかわ)町鳥ノ巣の地名に由来する鳥ノ巣層群は、西南日本外帯の秩父帯(ちちぶたい)および黒瀬川帯に分布し、鳥ノ巣石灰岩を伴っている。この鳥ノ巣石灰岩は一般に暗灰色で、ハンマーでたたくとかすかに石油臭がするのが特徴とされ、また、灰色で魚卵状の部分もある。鳥ノ巣石灰岩中には、パラストロマトポラ、ミレポリジウムなどの層孔虫や、石灰藻、六放サンゴ類、スポンジオモルファ類、硬質海綿類のケーテトプシス、コケムシなど造礁性生物が多く、外洋に面した沿岸から遠くない所にできた礁であったと考えられている。このほかネリネアなどの巻き貝、二枚貝、アンモナイト、腕足類なども多いが、棍棒(こんぼう)状のキダリスウニの棘(とげ)の産出を特徴とする。
鳥ノ巣石灰岩を伴う鳥ノ巣層群相当層は、西南日本外帯の九州、四国、紀伊半島、および関東山地に分布する。さらに関東山地の延長にあたる福島県相馬層群中の小池石灰岩は、岩相、化石内容が鳥ノ巣石灰岩にきわめて類似する。放散虫およびアンモナイトなどから、鳥ノ巣層群および相当層は中生代ジュラ紀後期から白亜紀前期のものと考えられるが、一部はジュラ紀中期から白亜紀前期に及んでいる。また外帯の四万十帯にも白亜紀前期を示す石灰岩が知られている。
[藤山家徳]