原発性肺アミロイドーシス

内科学 第10版 の解説

原発性肺アミロイドーシス(代謝異常による肺疾患)

定義・概念
 アミロイドーシスとは,アミロイド蛋白とよばれる線維構造蛋白が,各種臓器の細胞外組織に沈着する疾患である.アミロイド蛋白はβ構造を有する蛋白が重合したもので,難溶性,難分解性である.免疫グロブリン軽鎖由来のアミロイドL(AL),急性期血清蛋白由来のアミロイドA(AA)が代表的なアミロイド蛋白である.肺に限局してみられる場合,原発性肺アミロイドーシスという【⇨13-3-3)】.
分類
 アミロイドーシスは,アミロイドの沈着部位により全身性,限局性に分類される.全身性アミロイドーシスは,免疫細胞性(原発性,骨髄腫に伴うもの),反応性(関節リウマチなど慢性炎症に伴うもの),家族性などに分類される.限局性アミロイドーシスは脳,甲状腺,肺,膵,皮膚など,特定の臓器にアミロイド蛋白が限局的に沈着したものである.肺では全身性アミロイドーシスの肺病変として発症するもの,および肺のみに限局性に発症するもの(原発性肺アミロイドーシス)がある.原発性肺アミロイドーシスは,沈着部位により気管・気管支型,結節性肺実質型,びまん性肺胞中隔型に分類される.
原因・病因
 分解,代謝を受けた後,重合してアミロイドとなる前駆体蛋白の産生増加が病態の基礎にある.アミロイドが組織に沈着する原因は明確でない.
疫学
 全身性アミロイドーシスは剖検例の1%近くにみられる.原発性肺アミロイドーシスははるかに少なく,まれな疾患である.
病理
 アミロイドは無構造な物質で,H-E染色でエオジンに均一に染色され(図7-6-8),Congo-red染色では橙赤色に染色される.また偏光顕微鏡で緑色の複屈折を呈する.確定診断には病理所見の確認が必要である.
臨床症状
 臨床症状は乏しいことが多い.有症状例では,気管・気管支型では咳,喘鳴,血痰,喀血,などの気道症状が,びまん性肺胞中隔型では労作時呼吸困難,呼吸困難などが出現する.結節性肺実質型は無症状である.気管・気管支型は気管支鏡施行時,結節性肺実質型は偶然の胸部X線写真異常で偶然に発見されることが多い.びまん性肺胞中隔型は全身性アミロイドーシスの肺病変であることが多い.
検査成績
1)胸部X線写真,CT検査:
気管・気管支型では気管・気管支壁の肥厚,石灰化,気道閉塞による二次的な無気肺.結節性肺実質型では境界明瞭な,ときに石灰化や空洞のある腫瘤影.びまん性肺胞中隔型では多発粒状影やびまん性の小葉間隔壁肥厚を認める.
2)気管支鏡検査:
気管・気管支型では,黄色斑状の粘膜下病変が多発性に気管,気管支内腔にみられる.
3)呼吸機能検査:
気管・気管支型では閉塞性換気障害,びまん性肺胞中隔型では拘束性障害,拡散障害が起こる.
診断
 組織生検を行い,病理所見を確認して確定診断する.
鑑別診断
 気管・気管支型,結節性肺実質型では腫瘍性疾患と,びまん性肺胞中隔型ではびまん性肺疾患との鑑別が必要となる.
経過・予後
 病型によって異なる.一般的に長期の経過を取る.びまん性肺胞中隔型では他臓器の病変が予後を左右することが多い.
治療
 沈着したアミロイド除去に有効な薬物療法はない.気管・気管支型は経過観察を行うが.気道閉塞の危険がある場合はレーザー焼却の適応となる.[萩原弘一]
文献
厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 アミロイドーシスに関する調査研究班 アミロイドーシス診療ガイドライン 2010.
Utz JP, et al:Pulmonary amyloidosis. The Mayo Clinic Experience from 1980 to 1993. Ann Intern Med, 124:407, 1996.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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