ポーラー(偏光子)によって得られる偏光を試料に透過させ、それをもう一つのポーラーで解析することにより、試料の光学的性質を調べるために考案された特殊な顕微鏡。主として岩石や鉱物の薄片を観察するために使われるので岩石顕微鏡ともよばれる。
偏光顕微鏡は、普通の顕微鏡に加えて、(1)十字線を張った接眼鏡、(2)十字線の交点に一致する回転軸をもつ回転載物台、および(3)試料を挟んで振動方向の互いに直交する2個一対のポーラー、という三つの基本装置を備えている。試料と光源との間に置かれるポーラーをポラライザー、試料と観察者との間に置かれるものをアナライザーという。ポーラーとしてはニコルのプリズムなどの偏光プリズムや偏光板が使われるが、最近の偏光顕微鏡のポーラーはほとんど偏光板になっている。なお、回転載物台は、二つのポーラーの間で試料を360度回転できるためのものであるが、試料を固定し、それを挟んだポーラーを互いに偏光面を直交させたまま回転することによっても目的を達することができる。古い型の顕微鏡には、そのように設計されたものもある。
単色光源からの波長の一定な光をポラライザーに入射させると、それは単色の直線偏光になる。その振動方向をPP′とする( )。この偏光が、任意の方向に切られた光学的異方体の薄片に入ると、さらに振動方向が互いに直角でかつ速さの異なる二つの直線偏光AA′およびBB′に分かれる。そのときAA′方向およびBB′方向におけるPP′の成分は、それぞれ、
OA=OPcosθおよびOB=OPsinθ
になる。次にこの二つの偏光がアナライザーに達すると、その偏光面方向QQ′の成分だけが通過して、われわれの目に達することになる。それぞれの成分は、
OQ=OAsinθ=OPcosθsinθ
OQ′=OBcosθ=OPsinθcosθ
したがって、
OQ=OQ′
すなわち、AA′とBB′はアナライザーを通ることによって、一つの共通な方向QQ′に振動し、かつ振幅の等しい二つの偏光として合成される。この二つの偏光は、互いに速さが違うので、試料の厚さによって、いろいろな位相のずれを生じ、ある場合には強め合って明るくなり、他の場合には打ち消し合って暗くなる。光源が白色光であるときには、いろいろな色の光のうち、あるものが強められ、あるものが打ち消し合うと、色の組成が変化するため干渉色が生ずることになる。干渉色は試料が本来もっている色ではなく、無色透明な鉱物でも、二つのポーラーに挟んで白色光で見ると、色がついて見える。さらに直交ポーラーのままで、回転載物台を360度回してみると、θ=0度、90度、180度、270度のときにOQ=OQ′=0となって、試料は暗黒にみえる。
偏光顕微鏡は鉱物や岩石の研究のみならず、最近では合成有機物結晶の研究などにも広く利用されるようになってきた。
[橋本光男]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
光源をニコルのプリズムなどを通して偏光とし,試料に入射あるいは反射させて観察できる装置をもった光学顕微鏡.試料中の光学的性質の種々の差異をコントラストの差,あるいは色彩の差として表すことができ,結晶,鉱物,金属,生物などの研究に用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
… またそのころ,物体の透過光でなく物体によって反射または回折した光だけを観察することによって,レンズ系の解像力の限界以下の微細な粒子の存在を明らかにする暗視野集光装置が開発された。また,レンズ系に偏光子と検光子を挿入することによって,結晶の光学的異方性,複屈折性をしらべる偏光顕微鏡が生物試料にも用いられ,デンプンや細胞壁の構造の研究に利用されるようになった。偏光顕微鏡はその後生細胞の観察にも適用され,核分裂の紡錘糸,星状糸の研究などにも効力を発揮した。…
※「偏光顕微鏡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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