充実性臓器(肺,肝臓,腎臓,脳など)の内部に病変が生じ,その中心部が崩壊して中空となった病巣をいう。通常,中空となるには,崩壊した中心部の物質が吸収されるか外界へ放出されねばならない。したがって気道を通して外界と交通のある肺の病変で最も多く認められるもので,主として肺疾患のときに好んで用いられる言葉である。最も多い疾患は肺結核に際して生じる結核性空洞cavity tuberculousで,中心の乾酪壊死物質は一部は吸収されるが,大部分は気道を通じて咳や痰とともに放出されて中空をつくる。空洞の壁は結核特有の肉芽腫性炎症組織で厚く囲まれ,胸部レントゲン写真で明りょうに写し出される。外界と通じているため排菌も生じ,また病巣内への出血は喀血として新鮮血を排出する。肺結核と同様のレントゲン像を示す空洞性病変は肺癌や肺アスペルギルス症でもみられる。肺癌の場合は扁平上皮癌に多く,癌組織の中心部が自壊し,不規則な形の空洞をつくる。肺アスペルギルス症は固体の免疫能の低下した場合などに生じ,空洞の中に菌塊fungus ballを含んでいる。
執筆者:長島 和郎
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