反跳原子(読み)ハンチョウゲンシ

デジタル大辞泉 「反跳原子」の意味・読み・例文・類語

はん‐ちょうげんし〔‐テウゲンシ〕【反跳原子】

核反応や放射壊変により放射線を放出した原子は、運動量保存の法則に従い放出された放射線と反対方向に反跳する。こうした反跳エネルギーを受けた高エネルギーの原子をいう。ホットアトム

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化学辞典 第2版 「反跳原子」の解説

反跳原子
ハンチョウゲンシ
recoil atom

原子核変換の過程において強くはじき出された原子.原子核変換に伴って高エネルギーの粒子や光量子が放出され,運動量保存に見合っただけの運動エネルギー(反跳エネルギー)が原子核に与えられ,反跳現象が起こる.反跳エネルギーは原子核変換の種類によって異なり,(n,α)および(γ,p)反応のような粒子放出過程を含む反応では数 keV から数 MeV に達する.(n,γ)反応の場合には,複合核から放出されるγ線による反跳を受け,そのエネルギーは中程度の質量の原子で 102 eV から 103 eV である.β崩壊核異性体転移では,軽い原子を除くと,反跳エネルギーは数 eV 程度であることが多い.分子中に反跳原子が存在し,その反跳エネルギーが化学結合エネルギー(数 eV)に比較して十分大きいと,分子との結合を切断して遊離する.この現象はジラード-チャルマーズ効果ともよばれ,放射性同位体の製造や同位体分離濃縮にも利用されている.[別用語参照]ホットアトムジラード-チャルマーズ法

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「反跳原子」の意味・わかりやすい解説

反跳原子 (はんちょうげんし)

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の反跳原子の言及

【反跳】より

…原子核が核反応によって粒子線や電磁波を放出する際,運動量保存の法則に従って残留核に運動エネルギーが付与されることをいい,エネルギーを受けた原子を反跳原子という。反跳エネルギーはα崩壊や核分裂反応では大きく,β崩壊やγ線の放出では小さいが,それでもイオン化エネルギーや化学結合のエネルギーよりは大きいので,反跳原子はイオンとなったり,電子エネルギーが励起された励起状態となって,熱化学的に生成した同じ原子やラジカルでは起こりえない特異な化学反応を引き起こす。…

【ホットアトム】より

…反跳原子ともいう。核反応や放射線エネルギーの吸収過程で生成する原子で,反跳による運動エネルギーの獲得や異常な電子状態などのため系の平衡熱エネルギーより大きな運動エネルギーや内部エネルギーを有するものをホットアトムと呼ぶ。…

※「反跳原子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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