日本大百科全書(ニッポニカ) 「合同家族」の意味・わかりやすい解説
合同家族
ごうどうかぞく
joint family
ある両親のすべての息子が結婚後もその妻子とともに生家にとどまり、娘は婚姻によって生家を去るという原則に基づいて構成される家族形態。複合家族または共同家族ともいう。多人数の世帯を形成することになるが、現実には父の死亡などを契機として子の小家族(生殖家族)単位に分裂・縮小することが多い。この用語は元来インドの法律家が同国に特徴的なある種の家族形態を表示するためにつくったことばであるが、現在ではインドの家族だけでなく、中国やバルカン半島などに存在したある特定の形態の家族をさす一般的な用語となっている。合同家族を形成・維持するにはある程度の家産所有を前提とするので貧民階層では形成が困難であった。かかる事情からインドや中国の人々は合同家族を理想の家族形態とみなしてきた。しかし、理想と現実は別であり、これらの社会に合同家族が優越するわけではない。
[増田光吉・野々山久也]
『姫岡勤著『家族社会学論集』(1983・ミネルヴァ書房)』