20世紀日本人名事典 「吉田石松」の解説
吉田 石松
ヨシダ イシマツ
- 生年
- 明治12(1879)年5月10日
- 没年
- 昭和38(1963)年12月1日
- 出生地
- 福井県
- 経歴
- 大正2年8月名古屋市でガラス工場に勤めていたが、同市で繭商人戸田亀太郎が殺され1円20銭が奪われた事件において、翌日犯人として逮捕された2人の男の証言により、主犯として逮捕された。厳しい拷問にも終始否認し続け、翌3年4月名古屋地裁での死刑判決に対しては控訴。同年11月最終審で、無期懲役が確定し服役する。その後、獄中から再審請求や請願を続け、昭和12年には仮出所で2人の犯人からとった偽証をわびる証文もつけたが無効。戦後、5度目の再審請求で37年にようやく再審開始が決定。38年2月名古屋高裁の小林登一裁判長は「先輩が翁に対して犯した過誤を陳謝する」と無罪判決を下して過ちをわびた。ここに無実の罪は50年ぶりで晴らされ、再審制度見直しの契機が作られた。“昭和のがんくつ王”と呼ばれ、判決のわずか9カ月後に他界。
出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報