改訂新版 世界大百科事典 「同化混血モデル」の意味・わかりやすい解説
同化混血モデル (どうかこんけつモデル)
assimilation and hybridization model
新人,ホモ・サピエンスの起源に関する三つの仮説うちの一つで(もう二つは多地域進化説と出アフリカ説),新人の拡散の過程で,原人や旧人とある程度の混血があったという考え方。出アフリカ説の修正版ともいえる。つい最近までは,ネアンデルタール人とクロマニョン人の混血が話題となったが,潜在的な可能性はあったとしても,実際の証拠はない。つまり,はっきり混血であるといえるような化石は発見されておらず,ネアンデルタール人に起源すると考えられるDNAも現代人の中では発見されていない,と考えられていた。しかし,2010年5月7日の《サイエンス》に,ネアンデルタール人のゲノム解析により,アフリカ人以外の現代人の祖先とネアンデルタール人との間にわずかながら混血があったと報告され,にわかに現実味を帯びてきた。今後,他の地域の事例が追加されれば,新人の世界拡散の実態が明らかになるだろう。
執筆者:馬場 悠男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報