向付(読み)むこうづけ

精選版 日本国語大辞典 「向付」の意味・読み・例文・類語

むこう‐づけ むかふ‥【向付】

〘名〙
日本料理膳部中央より向こう側につける料理本来は膾(なます)仕立てであったが、刺身などを用いることが多い。また、それを盛りつける器。折敷向こうに置くところからこの名がある。おむこう。むこう。向こう詰め。
浄瑠璃心中宵庚申(1722)上「むかふづけはおろし大根鰯なます」
相撲で、額を相手の胸につけ、両手または片手で相手まわしを引き、がっちり構える体勢をいう。
河東節・祐成相撲物語(1716‐36頃か)「向(ムカ)ふつけ、掛れば外し、入ればあはす」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「向付」の意味・わかりやすい解説

向付
むこうづけ

供応料理の献立中の一品で、向こう、お向こうともいう。初め、あるいは二番目に出す料理で、客の向こう側に置くところからこの名がある。刺身または酢の物を用いたが、現在の向付は酒の肴(さかな)に向く気のきいた料理を出している。懐石(かいせき)では膾(なます)を向付という。また、本膳(ほんぜん)料理では本膳の向こう側(前方)に頭(かしら)付きの魚の焼き物を用いて、これを向詰(むこうづめ)という。最近はお通し、先付(さきづけ)などと混同されている場合もあるし、昭和初期からは前菜(ぜんさい)という中国名を用いることもある。

多田鉄之助

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改訂新版 世界大百科事典 「向付」の意味・わかりやすい解説

向付 (むこうづけ)

日本料理で膳の向こう側につける料理,また,それを盛りつける器をいう。江戸時代半ばには使われていたことばで,なますか刺身を用いることが多かった。向,向詰(むこうづめ)とも呼ばれたが,向詰は焼物をいう場合もある。現在の懐石では,初めに亭主が持ち出す折敷(おしき)に飯,汁とともに向付が配され,陶磁器の皿に刺身を盛るのがふつうである。
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百科事典マイペディア 「向付」の意味・わかりやすい解説

向付【むこうづけ】

会席料理などの品目の一つ。またその容器。刺身,酢の物などで,膳の向う側に配する。現在の懐石では初めに亭主の出す折敷(おしき)に飯,汁とともに配される。古田織部の向付は斬新な意匠で著名。

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