吹返(読み)ふきかえす

精選版 日本国語大辞典 「吹返」の意味・読み・例文・類語

ふき‐かえ・す ‥かへす【吹返】

[1] 〘自サ四〙 風の向きが変わって以前と反対方向に吹く。
※後拾遺(1086)雑五・一一三四「吹かへすこちのかへしは身にしみき都の花のしるべと思ふに〈康資王母〉」
[2] 〘他サ五(四)〙
① 風が吹いて、衣服の袖(そで)や裾(すそ)などを翻す。風が物を裏返す。
万葉(8C後)一・五一「采女の袖吹反(ふきかへす)明日香風都を遠みいたづらに吹く」
② 風がものを逆に吹きもどす。吹いてもとにもどす。
古今(905‐914)物名・四五二「さ夜ふけてなかばたけゆく久方の月ふきかへせ秋の山風〈景式王〉」
貨幣や金属具などを溶かして鋳直す。
呼吸を回復する。生き返る。蘇生する。
読本手摺昔木偶(1813)一「稍ありて息ふきかへし、ありし事どもくはしくかたり」
⑤ 楽器を繰り返し吹奏する。吹奏し直す。
※古活字本毛詩抄(17C前)七「吹かへす時に、みな同手でちとちとてがかはる」

ふき‐かえし ‥かへし【吹返】

〘名〙
① (「ふきがえし」とも) 風が向きを変えて、以前と反対の方向に吹くこと。また、その風。〔日葡辞書(1603‐04)〕
③ (「ふきがえし」とも) 兜(かぶと)の錣(しころ)の板の両端で外部に反り返した所。
源平盛衰記(14C前)四二「甲の吹(フキ)返しに、熊手をからと打懸て」
④ 女の髪の結い方の一種。吹鬢(ふきびん)を髱(たぼ)へかきあげた髪形
※仮名草子・花山物語(1648‐61頃か)二「たけの御くしを、中ほどよりをしきり、ふきかへしといふ物に、ゆひ給ひ」
強風で船が吹き倒されること。
※御留帳御船手‐延宝二年(1674)八月一七日「一御船大小拾五艘 内 四艘吹返し」

ふき‐かえ・る ‥かへる【吹返】

〘自ラ四〙
① 風の向きが変わって以前と反対の方向に吹く。
② 風が再び吹いて来る。幾度も繰り返して吹く。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android