呉歌西曲(読み)ごかせいきょく(その他表記)Wú gē Xī qǔ

改訂新版 世界大百科事典 「呉歌西曲」の意味・わかりやすい解説

呉歌西曲 (ごかせいきょく)
Wú gē Xī qǔ

中国,六朝時代に長江揚子江流域で流行した歌謡。《楽府(がふ)詩集》の清商曲辞に属するものが大多数で,五言四句を基本形式とする。三国から西晋時代にまず建康(建業)を中心とする長江下流域で呉歌が発達し,少しおくれて襄陽から長江中流域のあたりで西曲が流行して,知識人層をふくめた江南の社会全体にひろがった。その主題はほとんどが恋歌であるが,男女のかけ合いや双関語(かけことば)の使用など,機知的な表現の中に感情が託され,〈子夜歌〉など勝気な若い女性がうたわれることが多い。当時,水運の発達と共に勃興しつつあった江南の市民階層の心意気を反映した歌謡群であったと考えられる。このように本来は民衆的な生活に根ざすものであったが,やがて四季の行楽や女性の姿態をうたう華美な作品が増し,知識人層の模倣の作や妓楼でのお座敷歌が多くなった。唐代の李白の歌謡など,士大夫階層のものとは異なった都市市民層の生活感情を背景にした詩歌も,この呉歌西曲にその源流をあおいでいる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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