周防灘干拓遺跡(読み)すおうなだかんたくいせき

国指定史跡ガイド 「周防灘干拓遺跡」の解説

すおうなだかんたくいせき【周防灘干拓遺跡】


山口県山陽小野田市西高泊と山口市名田島にある樋跡。指定名称は「周防灘干拓遺跡 高泊開作浜五挺唐樋(たかとまりかいさくはまごちょうからひ) 名田島新開作南蛮樋(なたしましんかいさくなんばんひ)」。かつて海だったところを干拓したり、開墾したりして農地塩田にすることを、山口では「開作」といった。高泊(小野田市)の開作浜五挺唐樋と名田島(山口市)の新開作南蛮樋は、江戸時代の周防灘での干拓の実態を示す貴重な遺跡で、切り石による精緻な樋の構造は江戸時代の優れた土木技術をよく示しており、ともに周防灘干拓遺跡として1996年(平成8)に国の史跡に指定された。高泊の開作は、1668年(寛文8)に完成した。唐樋とは、潮の干満作用により自然開閉する仕組みの樋門である。設置された当初は3挺樋だったが、1857年(安政4)に5挺樋に増設された。樋門は幅10.81m、総高6.18mで、1989年(平成1)に新しい樋門が建設されるまで、300年以上にわたって使用された。名田島新開作南蛮樋は、山口市の椹野(ふしの)川の河口部にあり、1774年(安永3)に完成した。長方形に加工した花崗岩を積み上げた堅牢な石垣の間に、轆轤(ろくろ)によって巻き上げる仕切り板を設置し、潮の干満のつど樋守人が板を上下に作動させていた。これは潮の干満で自然開閉する唐樋に対して、南蛮樋と呼ばれた。1923年(大正12)に山口県営事業の干拓が完成し、樋門としての役目は終了した。高泊開作浜五挺唐樋へは、JR山陽本線ほか小野田駅から船木鉄道バス「浜」下車、徒歩すぐ。名田島新開作南蛮樋へは、JR山陽新幹線ほか新山口駅から防長バス「新栄橋」下車、徒歩約10分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

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