改訂新版 世界大百科事典 「呼吸器科」の意味・わかりやすい解説
呼吸器科 (こきゅうきか)
pulmonary division
呼吸器疾患をあつかう内科の専門診療科目。気管および気管支,肺,胸膜のさまざまな病気が含まれる。すでに診断のついている患者のほか,咳,痰,血痰,喀血,息切れ,呼吸困難,胸痛などの症状をもつ人や,健康診断などで胸部X線写真の異常陰影を指摘された人などが訪れる。のど(咽頭,喉頭)の病気は耳鼻咽喉科であつかう。胸痛などは,心臓や胸壁の病気(肋間神経痛や肋骨骨折など)でも起こることがあり,それぞれ循環器科,整形外科の領域に属する。結核全盛時代には,呼吸器科の中に肺の手術を担当する医師を含む施設もあったが,最近は胸部外科として独立する傾向がつよい。日本の呼吸器科医師の多くは,日本胸部疾患学会(1961設立,97年4月に日本呼吸器学会と改称。97年現在会員約9000人)に属している。ほかに古くからの日本結核病学会,肺癌学会などの専門的な学会もある。呼吸器科の診療対象も歴史とともに変化し,今日では,結核にかわって肺癌が大きな課題となっている。ほかに,気管支喘息(ぜんそく),慢性気管支炎,肺気腫などの慢性呼吸器疾患や,原因不明の数多くの疾患があり,呼吸器科の診療対象は広がっている。
→内科
執筆者:工藤 翔二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報