血液の混じった痰のことで、血痰の出た状態は、広くは呼吸器系の出血である喀血(かっけつ)に含まれる。したがって血痰の場合も喀血と同様、消化器系の出血である吐血との区別が必要である。実際に血痰をみると、血液が痰の中に点状、斑(はん)状、あるいは線状に認められる。肺結核の場合、喀血(純粋血液の喀出)とされたものが、実は血痰である場合があるし、また肺癌(がん)では、血痰が持続することも少なくない。臨床的には、気管支拡張症の際に血痰が認められることがもっとも多いとされている。さらに、新潟県や四国・九州などでは肺ジストマの感染による肺吸虫症の可能性も考慮すべきである。痰の検査は、呼吸器疾患の診断に重要であり、量、外観、臭気、異常物質の存在などの肉眼的所見ばかりでなく、顕微鏡的検査、さらに細菌学的検査を行う必要がある。
[渡辺 裕]
→痰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…気道または肺から血液を喀出する(吐き出す)ことをいう。ごく少量から1lにも達するものまでさまざまであり,痰に血液が少量混じる程度のものは血痰という。出血部位は喉頭,気管,気管支,肺実質などさまざまであり,気管支拡張症,肺結核,各種の肺炎,肺癌,気管支炎,肺化膿症,肺梗塞(こうそく)などが,鑑別すべき疾患である。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」