和泉屋染物店(読み)イズミヤソメモノミセ

デジタル大辞泉 「和泉屋染物店」の意味・読み・例文・類語

いずみやそめものみせ〔いづみやそめものみせ〕【和泉屋染物店】

木下杢太郎戯曲。明治44年(1911)「スバル」誌に発表。明治45年(1912)刊行。大正3年(1914)、新時代劇協会により有楽座初演

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「和泉屋染物店」の意味・わかりやすい解説

和泉屋染物店
いずみやそめものみせ

木下杢太郎(もくたろう)の戯曲。1幕。『スバル』1911年(明治44)3月号に発表。14年(大正3)に桝本(ますもと)清、沢田正二郎らの第二次新時代劇協会が有楽座で初演。新思想としての社会主義が紹介され始めた時代を背景に、その影響を受けた老舗(しにせ)の染物店のひとり息子をめぐっての、父を中心とする家族や縁者たちの対立、対応が、雪の降る元旦(がんたん)の夜という設定で描かれている。戯曲界に写実的な作風を開いた画期的な作品と評価される。息子が国中がひっくり返るような事件に関係したとされており、そこに大逆事件の影響をみる論者もいる。その意味で十分社会劇的なテーマであるが、気分劇として上演されたように、ロマン主義的な香りが強い。

大笹吉雄

『『現代日本戯曲選集2』(1955・白水社)』

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