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下垂体 かすいたいpituitary gland

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

下垂体
かすいたい
pituitary gland

脳下垂体。頭蓋のほぼ中央のトルコ鞍にはまり込み,視床下部と細い柄で連なっている内分泌腺。重さがわずか 0.6g程度の小さい臓器であるが,重要なホルモンを多数分泌し,他の内分泌腺の機能をコントロールしているため,内分泌系の主導者の名がある。前葉後葉に分けられる。前葉からは,成長ホルモン甲状腺刺激ホルモン,副腎皮質刺激ホルモン (ACTH) ,卵胞刺激ホルモン,黄体形成ホルモン,プロラクチンなどが,また後葉からはバソプレッシン (抗利尿ホルモン) とオキシトシンが分泌される。

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百科事典マイペディアの解説

下垂体【かすいたい】

脳下垂体

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栄養・生化学辞典の解説

下垂体

 脳下垂体ともいう.ヒトでは間脳の視床下部から下方に突出した器官で,前葉と後葉とよばれる二つの異なる由来の組織が結合して構成されている.動物種によっては中葉の部分がある.内分泌器官で前葉は成長ホルモン,プロラクチン,副腎皮質刺激ホルモン,性腺刺激ホルモン等,後葉はオキシトシン,バソプレッシンなどを分泌する.中葉に相当する部分はメラノトロピンを分泌する.後葉ホルモンは視床下部で合成され軸索輸送で後葉に至り分泌される.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

下垂体
かすいたい

脳下垂体ともいい、すべての脊椎(せきつい)動物にある重要な内分泌器官。
 人間では脳底のトルコ鞍(あん)(下垂体窩(か))の中にあり、大きさは10ミリメートル×13ミリメートル×6ミリメートルほどの楕円(だえん)体である。下垂体は前葉、中葉、後葉の3部に分けられ、それぞれ別のホルモンを分泌しているが、発生学的には、前葉および中葉は皮膚外胚葉(はいよう)のラトケ嚢(のう)(胎生期に現れる、咽頭(いんとう)の粘膜上皮が伸びてできた切れ込み)に由来しているが、後葉は第三脳室底部の隆起(漏斗(ろうと))に由来している。この両者が接合して下垂体という一つの臓器になるわけである。このため、前葉と中葉はまとめて腺(せん)(性)下垂体、後葉は神経(性)下垂体とよばれる。前葉ホルモンおよび中葉ホルモンは、それぞれ、前葉、中葉の分泌細胞から分泌されるが、後葉ホルモンは、視床下部にある神経細胞内で合成され、その軸索(神経細胞から発する長い突起)の中を通って後葉に達し、そこで軸索末端から直接血液中に分泌される。このような分泌様式を神経分泌という。一方、前葉ホルモンや中葉ホルモンを分泌する細胞も、視床下部の神経細胞の影響を受ける。この場合は、視床下部の神経細胞内で合成された物質が、その軸索末端から下垂体前葉を灌流(かんりゅう)する血管(下垂体門脈)中に分泌される。現在、この物質も一種のホルモンと考えられ、視床下部ホルモンとよばれるようになった。視床下部ホルモンは、前葉および中葉に至ってその部位の分泌細胞の分泌を促進したり抑制したりするわけである。このように下垂体のホルモン分泌は、自律神経の中枢である視床下部と密接な関係がある。つまり、神経系と内分泌系とが密に連絡しているということができる。内分泌系は、神経系の作用によって分泌が変化するが、逆に視床下部ホルモンの分泌は、下垂体ホルモンやその下位ホルモンの影響を受けて促進されたり抑制されたりする。すなわち、神経系と内分泌系とは互いに協調し、あるホルモンの分泌が多すぎると、ただちにその分泌を抑制し、逆に少なすぎると分泌を促進するようなフィードバックが働く。その結果、ホルモン濃度は一定に保たれ、内部環境が恒常に保たれることになる。[真島英信]

下垂体ホルモン

まず、前葉ホルモンとして、(1)成長ホルモン、(2)プロラクチン(催乳ホルモン)、(3)甲状腺刺激ホルモン、(4)副腎(ふくじん)皮質刺激ホルモン、(5)性腺刺激ホルモンがあるが、性腺刺激ホルモンには、卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンがあるから、合計6種類のホルモンが分泌されていることになる。中葉ホルモンには、メラニン細胞(黒色素胞(こくしきそほう))刺激ホルモンがある。また、後葉ホルモンとしては、オキシトシン(子宮収縮ホルモン)とバゾプレッシン(抗利尿ホルモン)の2種がある。こうしてみると、結局、下垂体からは少なくとも9種類のホルモンが分泌されていることになる。このうち、甲状腺刺激ホルモンなどの4種類は、さらに他の内分泌腺を刺激する上位ホルモンである。たとえば、甲状腺刺激ホルモンは甲状腺を刺激するが、甲状腺も一つの内分泌臓器であって、甲状腺ホルモンであるチロキシンを分泌している。したがって、下垂体は内分泌腺のなかでも上位にあって、種々のホルモン分泌を支配し、それぞれの機能の発現をコントロールしているといえる。以下、それぞれのホルモンについて触れる。
(1)成長ホルモン(略号GH) 191個のアミノ酸からなるポリペプチドで、前葉のα(アルファ)細胞から分泌される。骨の成長を促進し、身長の増加に寄与する。骨以外のすべての組織に対しても広く代謝促進効果を示す。たとえば、血糖値を上昇させ、タンパク合成を促進し、脂肪を動員する。
(2)プロラクチン(催乳ホルモン) 191個のアミノ酸からなるポリペプチドで、前葉のε(イプシロン)細胞から分泌される。乳汁産生を促進する作用がある。そのほか、黄体ホルモンの分泌を促進する。男性への作用は明瞭ではない。
(3)甲状腺刺激ホルモン(略号TSH) 96個のアミノ酸からなるα鎖と、113個のアミノ酸からなるβ(ベータ)鎖をもつ糖タンパクで、前葉のβ細胞から分泌される。甲状腺を刺激してチロキシンの分泌を促進する。
(4)副腎皮質刺激ホルモン(略号ACTH) 39個のアミノ酸からなるポリペプチドで、分泌細胞は不確定である。副腎皮質を刺激して、糖質コルチコイドの分泌を促進する。
(5)卵胞刺激ホルモン(略号FSH) 90個のアミノ酸からなるα鎖と115個のアミノ酸からなるβ鎖をもつ糖タンパクで、前葉のδ細胞(デルタさいぼう)から分泌される。卵胞の発育およびエストロゲン分泌を促進する。男性では睾丸(こうがん)を刺激して、テストステロンの分泌、および精子形成を促進する。
(6)黄体形成ホルモン(略号LH) 89個のアミノ酸からなるα鎖と、119個のアミノ酸からなるβ鎖をもつ糖タンパクで、前葉のδ細胞から分泌される。成熟卵胞に作用して排卵をおこさせる。また、黄体に作用してプロゲステロンの分泌を促進する。
(7)メラニン細胞刺激ホルモン(略号MSH) 13個のアミノ酸からなるポリペプチドで、中葉から分泌される。皮膚のメラニン細胞のメラニンを拡張させ、皮膚の色を黒くする。
(8)オキシトシン(子宮収縮ホルモン) 8個のアミノ酸からなるポリペプチドで、後葉から分泌される。子宮収縮、および乳汁排出作用がある。
(9)バゾプレッシン(抗利尿ホルモン、略号ADH) 8個のアミノ酸からなるポリペプチドで、後葉から分泌される。血圧上昇、および尿細管の水再吸収促進による尿量減少作用をもっている。[真島英信]

動物の下垂体

脊椎動物のうち、無顎(むがく)類(ヤツメウナギ、ヌタウナギなど)では、ラトケ嚢の下方から唇が前方に伸びるため新たな腔所(こうしょ)ができる。この腔はやがて頭部前上方に移動し、最終的には入口は鼻孔となり、先端部の結合組織内に腺性下垂体が生じる。すなわち、無顎類の腺性下垂体は、他の脊椎動物におけるような口陥構造ではなく、鼻下垂体管の鼻咽頭(びいんとう)粘膜から発生する。彼等より進化した軟骨魚類の腺性下垂体には、腹葉とよぶ特殊な構造があるが、この腹葉は四足動物の隆起葉(結節部ともいい、前葉、中葉の上部にあり、血管網が発達している)の変形である。一方、硬骨魚類の条鰭(じょうき)類には腹葉がなく、腺性下垂体は、前葉(主葉)頭部、前葉尾部、中葉に分けられる。軟骨魚類、硬骨魚類の全骨類と総鰭類、鳥類にも前葉に区分があるが、両生類、爬虫(はちゅう)類、哺乳(ほにゅう)類には区分がない。また、鳥類やある種の哺乳類には中葉が存在しない。
 神経性下垂体の神経葉(後葉と同義に用いられることが多い)には、視床下部に細胞体のあるニューロン軸索が集合しており、バソプレッシン、オキシトシンなどが蓄積されている。下等脊椎動物ではアルギニンバソトシンしか含まないものもある。正中隆起(神経葉とともに神経性下垂体に含まれる)は、鳥類では神経葉ホルモン(後葉ホルモン)も含むが、おもに前葉の細胞に作用して前葉ホルモンの分泌を促進または抑制するホルモン(放出ホルモンと抑制ホルモン)を含んでいる。これらの視床下部ホルモンが、下垂体門脈という血管系に分泌され、前葉に運ばれて作用する動物が多いが、下垂体門脈の発達していない動物では拡散により前葉に達する。条鰭類では正中隆起が前葉に接しているので、視床下部ホルモンはより直接的に前葉細胞に作用する。中葉の細胞に働く因子も視床下部で産生される。他方、腺性下垂体は、視床下部ホルモンの作用を受けて、さまざまなホルモンを分泌する。それぞれのホルモンは異なる細胞から分泌されることが多いが、複数のホルモンを一つの細胞が分泌する例も知られている。[川島誠一郎]

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世界大百科事典内の下垂体の言及

【脳下垂体】より

…脊椎動物における最も重要な内分泌腺。最近は単に下垂体といわれることが多い。神経下垂体neurohypophysisと腺下垂体adenohypophysisとからなる。…

※「下垂体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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