改訂新版 世界大百科事典 「善隣政策」の意味・わかりやすい解説
善隣政策 (ぜんりんせいさく)
Good Neighbor Policy
アメリカのF.D.ローズベルト大統領がとった対中南米政策の総称。大統領は,1930年代の政治的・経済的危機状況のなかで,アメリカの従来の武断主義的内政干渉政策が中南米諸国を離反させ,それがヨーロッパ列強の干渉と進出を招くことを恐れ,就任後その政策の転換をはかる。転換の骨子は,合衆国が唱道してきたモンロー主義を,米州諸国全体の共同政策として確認し,西半球の集団防衛体制を確立することにあった。33年モンテビデオ米州諸国会議で内政不干渉を公約,ハイチから海兵隊を撤退,34年のキューバ内乱で武力介入を避け,さらに20世紀初頭以来アメリカの対キューバ内政干渉権を認めていたプラット修正条項を撤廃し,36年にはパナマとの不平等条約の部分改訂を行った。他方,経済・文化面での援助協力を強化させ,中南米貿易の拡大をはかる。また第2次大戦では米州諸国家を,汎米戦線のもとに糾合し戦争遂行に協力させる。その後同政策は,チャプルテペク条約,リオ条約を経て,48年ボゴタ会議での米州機構(OAS)結成につながり,西半球諸国の集団安全保障体制づくりに収束されていった。しかし善隣政策は,のちのケネディによる破綻した〈進歩のための同盟〉政策に見られるように,あくまでアメリカの利益を基調とし,新植民地主義的な対米従属関係を覆い隠す本質を併せもっていた。
執筆者:進藤 栄一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報