モンロー主義(読み)もんろーしゅぎ(英語表記)Monroe Doctrine

翻訳|Monroe Doctrine

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モンロー主義」の意味・わかりやすい解説

モンロー主義
もんろーしゅぎ
Monroe Doctrine

アメリカ合衆国の基本的外交方針の一つ。新世界をヨーロッパから区別し、両者の距離を保とうとする姿勢は、すでにアメリカ独立革命のころからみられたが、1823年に第5代大統領モンローが初めてこの立場を明確に示した(モンロー宣言)ことから、その外交方針は「モンロー主義」とよばれる。

 モンロー宣言は、二つの背景をもっていた。一つには、1821年、ロシアは北緯51度以北の北米太平洋岸地域をロシア領とする布告を発したが、これに対してアメリカ国務長官J・Q・アダムズは、新大陸はもはやヨーロッパの植民の対象とはならないという、植民地主義否定表明していた。一方イギリスは、1810年代にスペインから独立したラテンアメリカ諸国へのヨーロッパ列強、とりわけフランスの干渉を恐れ、23年に外相カニングを通して干渉反対の英米共同宣言を提案した。しかし、イギリスへの不信感から合衆国の単独宣言を主張したアダムズの意見が採用され、同年12月2日、大統領モンローは議会への教書で、先の植民地主義の否定を繰り返すとともに、アメリカとヨーロッパの相互不干渉の原則を表明し、ラテンアメリカ諸国へのいかなる干渉も、合衆国に対する非友好的態度とみなすことを宣言。

 モンロー主義はその後繰り返し表明され、合衆国の基本的外交原理の一つとして確立されたが、時代の推移とともに拡大解釈されるようになり、とりわけ20世紀に入ると、合衆国のみが新大陸諸国に干渉することを正当化する原理となった。

[竹本友子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モンロー主義」の意味・わかりやすい解説

モンロー主義
モンローしゅぎ
Monroe Doctrine

1823年 12月2日にアメリカ第5代大統領 J.モンローが議会へ送った教書のなかで述べた原則。おもな内容は,(1) アメリカ大陸は,今後ヨーロッパ諸国によって将来の植民の対象と考えられるべきではないこと,(2) アメリカはヨーロッパの政治に介入しないこと,(3) ヨーロッパ諸国の圧迫その他の方法による西半球諸政府に対するいかなる干渉もアメリカへの非友好的意向の表明とみなすこと,であった。以後モンロー主義はアメリカの対外的主張として,しばしば表明されたが,国際政治の動向に対応してその解釈も意味も変遷した。たとえば 1845年 J.ポーク大統領は,アメリカ大陸,特に北アメリカにおける現状維持の正当化のためにこの原則を主張した。また T.ルーズベルト大統領は,ラテンアメリカ諸国に対するアメリカの干渉を正当化するための根拠としてモンロー主義を主張した。その後,1933年の第7回汎米会議でアメリカは干渉権の放棄を公式に表明した。しかし第2次世界大戦後も,アメリカの中南米政策にみられるように,西半球におけるアメリカの優勢と支配を維持するという意味で T.ルーズベルトのような主張は現在も残っているといえるが,それは次第にモンロー主義としては主張されなくなってきている。

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