軽い、喜劇的な音楽劇の意で、comic operaの訳語。日本では、イタリアのオペラ・ブッファ、フランスのオペラ・コミック、ボードビル、ドイツとオーストリアのジングシュピール、オペレッタ、スペインのサルスエラ、イギリスのバラッド・オペラ、コミック・オペラ、アメリカのミュージカル・コメディなどのすべてをこれに含めることが多く、狭義にはオペレッタをさす場合もある。また、アメリカではライト・オペラlight operaという語も用いられている。これらの音楽劇に共通する特色は、音楽と音楽の間に台詞(せりふ)のやりとりがあってストーリーが展開することで、内容的には喜劇に限らない。有名なビゼーの『カルメン』も、本来はオペラ・コミックとして作曲されたものである。
[寺崎裕則]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…その流れを汲むイタリアのオペラ・セーリアopera seria(正歌劇)やフランスのトラジェディ・リリックtragédie lyrique(抒情悲劇)は,古典的な格調の高さにおいて高度の様式美を維持しながら,社会の上層部,支配階級と結びついて発展した。18世紀以降は,これに対して,イタリアではオペラ・ブッファopera buffa(道化オペラの意),フランスではオペラ・コミックopéra comique(喜歌劇,のちにはせりふを含むオペラを意味する),イギリスではバラッド・オペラballad opera(俗謡オペラ),ドイツではジングシュピールSingspiel(歌芝居)など,より庶民的な性格の強いオペラのタイプが興ったが,それらに共通するのは,正歌劇や抒情悲劇の貴族性と形式ばった様式に対する反動とパロディの精神であった。つづく19世紀には,作品の規模,壮大な舞台効果,シリアスな情緒において,かつてない高みに登ろうとした〈グランド・オペラgrand opéra〉に対して,再び庶民的な気軽さと息抜きを求めるオペレッタが興った。…
…18世紀を通じてイタリアのオペラ・ブッファやインテルメッツォのドイツ語版や編曲に,フランスのボードビルやオペラ・コミックに,またジングシュピールや人気オペラのパロディに使われ,J.G.ワルターやJ.マッテゾンも〈小さなオペラ〉と定義している。しかし19世紀中ごろから対話・歌・舞踊から成る1~3幕の娯楽的な〈喜歌劇〉をさすようになった。こうした変化はフランスにあらわれ,オッフェンバックの《地獄のオルフェ(天国と地獄)》(1858)や《うるわしのエレーヌ》(1864)によってオペレッタの典型が作られ,第二帝政期のパリで熱狂的に受け入れられた。…
※「喜歌劇」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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