日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジングシュピール」の意味・わかりやすい解説
ジングシュピール
じんぐしゅぴーる
Singspiel ドイツ語
「歌芝居」の意。18世紀後半から19世紀中ごろまでドイツで上演された歌劇の一形体。ドイツ語で書かれ、多くは明るく喜劇的な筋(すじ)をもつ。大きな特徴として、一般のオペラとは異なり、地の台詞(せりふ)が多く用いられる。
1743年ベルリンで、イギリスのバラッド・オペラ(対話と民謡や当時の有名な旋律から構成された劇場作品)『悪魔は放たれた』Devil to Payのドイツ改作版が上演された。これに刺激を受けたヒラーJohann Adam Hiller(1728―1804)が、1766年新たに作曲した同名の作品を上演して成功させ、以後ドイツ各地で新作のジングシュピールが上演されるようになった。その後、イタリアのオペラ・ブッファやフランスのオペラ・コミックの影響を受けつつ発展し、やがてモーツァルトの『バスティアンとバスティエンヌ』(1766)、『後宮からの逃走』(1782)などの代表的なジングシュピールが生み出された。しかし、19世紀中ごろには、これにかわるオペレッタに押されて姿を消していった。
[石多正男]