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フランスの作曲家。パリ生まれ。両親とも音楽家で、早くから音楽に親しむ。9歳でパリ音楽院に入学、約10年間在籍し、アレビ、グノーらに師事、多部門で一等賞を受けた。在学中に作曲した交響曲ハ長調(1855)には、溌剌(はつらつ)とした表情、印象深い旋律など、後の彼の作品の性格が表れている。1857年にカンタータ『クロビスとクロチルド』を作曲してフランス作曲家の登竜門である「ローマ大賞」を受け、19歳でローマへ留学したが、母の病のため60年にパリに戻る。在学中からオペラなどの劇場音楽の作曲を試み、留学中はイタリア語の台本によるドニゼッティ風のオペラ・ブッファを作曲した。最初の傑作『真珠とり』(1863)は、異国的な旋律、管弦楽による表現の色彩感、優美さなどを備えながらも、当時はあまり評判にならなかった。
これに続いて10曲余りのオペラ、オペレッタが計画されたが、大半が未完ないし破棄され、残された4曲中今日かろうじて上演の機会があるのは『美しいパースの娘』(スコットの小説による。1867初演)だけである。1871年、四手用ピアノ曲『子供の遊び』と同曲の抜粋の管弦楽版、72年にドーデの戯曲『アルルの女』の付随音楽(27曲)と、そのうち4曲を演奏会用に編曲した組曲『アルルの女』(第一組曲とよばれているもの)がそれぞれ成功を収めた。これに力を得たビゼーは、オペラ・コミック座から委嘱された『カルメン』の作曲に力を注ぎ、4幕のオペラ・コミックとして74年に完成した。しかし翌年3月同劇場で行われた初演は、内容が社会的には下層の人々を扱っていたこと、従来のオペラ・コミックとは異質の表現力と生気にあふれた音楽であったことなどが原因で、聴衆の理解をただちに得ることはできず失敗に終わり、ビゼーはその3か月後に失意のうちに他界した。同年10月『カルメン』はギローによりグランド・オペラのスタイルに改作され、ウィーンで大成功を収めた。これを機会に『カルメン』とビゼーに対する評価は変わり、フランス音楽史上もっとも天賦のドラマチックな精神と音楽性をもった作曲家とみなされるようになった。
[美山良夫]
フランスの作曲家。音楽家の家庭に生まれ,幼いときから音楽の才能を示し,9歳でパリ音楽院に入学。ピアノ,オルガン,作曲などを学んだ。1857年ローマ大賞を獲得してローマに留学した。これに先立ち,オッフェンバック主催のオペレッタ作曲コンクールに入選。イタリアから帰国後,63年彼の最初の重要なオペラ《真珠採り》が完成し上演されたが,高い評価は得られなかった。その後《美しきパースの娘》(1866),《ジャミレ》(1871)などのオペラを書いたが,いずれも不評に終わった。しかし72年A.ドーデの戯曲《アルルの女》のために書いた付随音楽は,初演当時は不評であったにもかかわらず,85年の再演で成功をおさめ,さらに作者自身によって編曲された組曲(1872。《第1組曲》と呼ばれる。《第2組曲》はギロー編曲)も称賛を博した。
彼の代表作であるオペラ《カルメン》(1874)は,75年に初演されたが,聴衆の理解を得られず,不成功に終わった。しかしこのオペラは,彼が若くして世を去った数ヵ月後にウィーンで上演され大成功をおさめて以来,今日まで世界中のオペラ劇場の重要なレパートリーの一つとなっている。《カルメン》は19世紀特有の異国趣味を背景に,生き生きとした旋律とリズム,簡潔で色彩豊かな管弦楽法による巧みな劇的効果となまなましいまでにリアリスティックな表現において,フランス・オペラ史上画期的な作品となっている。
執筆者:寺田 由美子
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…奔放なジプシー女カルメンは,いわば近代人の枠外に設定された人物で,ロマン派好みの異国趣味を背景に,作者の多年のスペインへの傾倒から析出した結晶といえよう。【冨永 明夫】
[音楽]
メリメの小説にビゼーが1873‐74年に作曲した4幕のオペラ。パリのオペラ・コミック劇場の依頼による。…
… フランス音楽の再生は,むしろグノーとサン・サーンスに始まるというべきであろう。グノーの《ファウスト》は劇場からマイヤーベーアとイタリア人を遠ざける最初の一撃となり,《マノン》のマスネー,フランス的なレアリスムに立つ《カルメン》のビゼーと《ルイーズ》のG.シャルパンティエら,フランス的な感性を主張する歌劇作家が後に続いた。一方,サン・サーンスは器楽復興の推進者であった。…
※「ビゼー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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