四重極質量分析計(読み)シジュウキョクシツリョウブンセキケイ

化学辞典 第2版 「四重極質量分析計」の解説

四重極質量分析計
シジュウキョクシツリョウブンセキケイ
quadrupole mass spectrometer

マスフィルターともいう.磁場を必要としない高周波質量分析計の一種.図に示す4本の円筒(理論的には軸が中心に向かう四つの双曲線)断面の向かい合った二組の電極をそれぞれ電気的に結合し,直流電圧Uとラジオ波 V0 cos ωtを加えた電位を正負に図のように印加する.Z方向に入射したイオンZ方向には加速されず,XY方向に次のマチュー(Mathieu)方程式に従って加速される.

ここで,

θ = ωt
α = (2eV0)/(mr02ω2),
β = U/V0
で,mはイオン質量,r0 は図に示した中心から電極までの距離である.マチュー方程式の解は一定質量のイオンが発散されずに(すなわち,有限な振幅をもった振動をする)Z方向に進む条件を与える.m/eは次式で示される.

U/V0とωを一定にすれば r0 を変化させてZ方向の一定の位置でイオンを検出し,質量スペクトルが得られる.この質量分析計はW. PaulとM. Raetherにより,1955年にウラン同位体分離器を目標に大型(2 m の長さ)のものがつくられた.現在は円筒分析部の長さ10~40 cm 程度の小型で軽量なものが製作され,感度の高いこともあり各種装置につける質量分析計として広く使用されている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「四重極質量分析計」の解説

四重極質量分析計

 イオンの分離に四重極を用いる質量分析計.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の四重極質量分析計の言及

【質量分析法】より

…その後,J.J.トムソンによるネオンの同位元素の分離(1912)を経て,現在の原形となる質量分析器がデンプスターArthur Jeffrey Dempster(1886‐1950)(1918),F.W.アストン(1919)らによって考案され,それによる各種元素の同位体発見と,原子質量の測定(1925)等が行われた。第2次大戦までは,質量分析法はもっぱら原子質量の測定,同位体元素の存在比測定,あるいは原子または分子の電子衝撃法によるイオン化ポテンシャル,出現電圧あるいは結合解離エネルギーの測定等に用いられていたが,大戦後は,装置の飛躍的進歩と,高周波電場を利用した走査速度の速い四重極質量分析計が出現し市販されるにいたり,質量分析法は,有力で万能な種々の化合物の測定手法として広い分野で普及するようになった。
[質量分析法の現状と利用]
 原子質量測定においては,高分解能の二重収束質量分析器が使用される。…

※「四重極質量分析計」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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