日本大百科全書(ニッポニカ) 「塗工紙」の意味・わかりやすい解説
塗工紙
とこうし
原紙の片面または両面に白土などの鉱物性顔料とカゼインなどの接着剤を混合した塗料でコーティング(塗工)した紙の総称。アート紙、コート紙、軽量コート紙およびキャストコート紙などがあり、表面が平滑で多色印刷や写真印刷など高級印刷に用いられる。なおバライタ紙は写真の印画紙の原紙として用いられる。原紙としては通常、上質紙(印刷用紙A)が用いられるが、中質コート紙では中質紙が用いられ、近年では一部白板紙に塗工する例もある。なおバライタ紙の原紙には、針葉樹を原料とする溶解パルプのように、とくに精製されたパルプで抄造された紙を使用する。
塗工の方法としては、いったん抄紙機から巻き取った紙を巻き戻しながら塗工機にかけて塗工するオフマシン方式と、抄紙機と塗工機とを一体化して抄紙機上で塗工するオンマシン方式とがあり、最近高速塗工が可能となってからは、アート紙よりも安いコート紙、中質コート紙および軽量コート紙などの塗工にはオンマシン方式が多く採用される。塗工機には、多量の塗料を原紙に付着させ、余分の塗料をエアナイフで取り除くエアナイフコーターと、ブレードでかき取るブレードコーターが多く使われ、とくに後者は高速塗工に向くためオンマシン方式に多く採用される。コート紙の塗料の顔料としては多く白土とタルクが用いられ、バライタ紙にはその名のようにバリタ(硫酸バリウム)が使われる。接着剤としてはカゼイン、膠(にかわ)、デンプンおよび合成樹脂などが用いられる。
なお、キャストコート紙は、アート紙よりいっそう印刷効果を高めるためにつくられた強光沢紙で、白色度も高く、カレンダー、ポスターなど多色刷り高級印刷物に適する。一方、コート紙はアート紙より塗被量が少なく、平滑度も低く品質も劣る。軽量コート紙および中質コート紙はさらに低品質かつより安価で、新聞の折込広告などに多く用いられ、白板紙に塗工したものは紙箱など紙器に用いられる。
[御田昭雄 2016年4月18日]