印画紙(読み)インガシ(その他表記)photographic paper

デジタル大辞泉 「印画紙」の意味・読み・例文・類語

いんが‐し〔イングワ‐〕【印画紙】

写真で、陰画原板を焼き付けて陽画を作るための感光紙。白黒用とカラー用がある。

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精選版 日本国語大辞典 「印画紙」の意味・読み・例文・類語

いんが‐しイングヮ‥【印画紙】

  1. 〘 名詞 〙 原紙の表面に感光乳剤を塗布した写真用紙。陰画から陽画をつくる焼き付けに用いる。主に密着用のガスライト紙、引き伸ばし用のブロマイド紙クロロブロマイド紙などがある。
    1. [初出の実例]「種板から焼付けて写真をこしらへるに使ふ紙を印画紙(イングヮシ)といひますが」(出典:フィルム写真術(1920)〈高桑勝雄〉写真器はどんなものか写真はどうして出来るか)

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改訂新版 世界大百科事典 「印画紙」の意味・わかりやすい解説

印画紙 (いんがし)
photographic paper

紙を基体とした支持体に感光乳剤を塗布乾燥した写真感光材料。密着焼付けまたは引伸しによって写真の陰画(ネガ)から陽画(ポジ)を得るために使用する。現像方式に対応していくつかの種類に分類されるが,ここでは最も一般的な一般現像紙とその他の印画紙とに分けて説明する。

焼付け後,順次,現像→停止→定着→水洗→乾燥の通常工程をとるもので,仕上がりプリントが長期保存に適するものとなる。その構成は,支持体,乳剤層,保護層の3層からなる。支持体は従来,原紙そのもののほかに,原紙の乳剤層側に硫酸バリウムバライタ),ゼラチン,硬膜剤などを含むバライタ層を塗布したバライタ紙baryta paperが多く使われてきたが,最近は処理工程の簡易迅速化のために原紙の表裏をポリエチレンなどの樹脂で覆い原紙が水を吸収しないようにしたレジンコート紙resin coated paperが多く使われている。バライタ層は反射度・光沢度の増加,写真画像の階調の良化などにたいせつなもので,レジンコート紙の場合は,ポリエチレンの中に含まれている二酸化チタンが反射度・光沢度の増加,写真画像の階調と解像力の良化に重要な役割を果たしている。支持体の色には純白色,微赤白色,クリーム色,象牙色などがあり,光沢,半光沢,滑面,微粒面,粗面,絹目面などといった表面状態や厚さにも種々のものがある。また湿式化学処理が行われるので,伸縮性,カーリング(湾曲すること),耐薬品性等には十分な注意が払われている。

 乳剤として用いられるのはハロゲン化銀ゼラチン乳剤であるが,ハロゲン化銀の種類によって以下に述べるような性能の異なる各種の印画紙が作られる。

(1)ガスライト紙gaslight paper 塩化銀,あるいは塩化銀に少量の臭化銀を加えたものを用いたもので,密着焼付け用に使用される。一般現像紙の中では最も感度が低く(ブロマイド紙の1/100,低感度ネガ乳剤の1/1000),黄色の安全光の下で使うことができる。この種の印画紙が発明された当初,ガス灯の光で焼き付けたことからこの名が生まれた。

(2)クロロブロマイド紙chlorobromide paper 塩化銀silver chlorideと臭化銀silver bromideの混合乳剤を用いたもので,密着焼付けよりも高感度が要求される引伸し用に使用される。比較的感度が低いので,明るい安全光(赤みを帯びた黄色)の下で使うことができる。ブロマイド紙よりも現像速度が速く色調もよいなどの特徴がある。現在では焼付け用光源も明るいものに改良されていることもあり,引伸し用印画紙はほとんどクロロブロマイド紙である。

(3)ブロマイド紙bromide paper 臭化銀を用いた一般現像紙で,印画紙としては最高感度のものである。引伸し用のほかに撮影感度をもつ反転現像用印画紙や写真植字用印画紙等がこのタイプである。ハロゲン化銀の粒子の大きさ,粒子サイズ分布は印画紙の色調に関係し,ガスライト紙は塩化銀の微粒子のために緑黒色調,ブロマイド紙では臭化銀の粒子が大きいので黒青灰色を帯びる。保護層は,乳剤層の摩擦や圧力による〈かぶり〉を防ぐためにかぶせた薄いゼラチンの層である。この層は表面の光沢を増加させ,バライタ紙のフェロタイプ処理を容易にする。一般現像紙には,その階調(コントラスト)が軟調から超硬調まで5段階に分けられているものもあり,いろいろな特徴があるので,写真焼付けに際しては,面種,密着か引伸しかの違い,さらに陰画の濃淡によって適切なものを選ぶことがたいせつである。

 なお,カラー写真用の印画紙(カラーペーパー)では,支持体の上に青色光,緑色光,赤色光にそれぞれ感光する三つのハロゲン化銀乳剤層が重ねて塗布してあり,発色現像によってカラーネガフィルムの色像と補色の関係にある色像が得られるようになっている。

一般現像紙以外の印画紙としては,現像方式の違いにより,安定化用紙,反転現像紙拡散転写紙熱現像紙焼出印画紙などがある。安定化用紙は,現像主薬が乳剤層に含まれており,高アルカリ液で現像されたのち,安定化(未露光部の現像されずに残ったハロゲン化銀を光に対して安定な形に変える処理)を行い,水洗せずに乾燥するものである。この方式は迅速かつ簡便であるが,光に対する安定度は低く長期保存には適さない。反転現像紙は,撮影感度をもつスピード写真やカラースライドからの黒白プリント作り等に用いられる。拡散転写紙はインスタントフォトグラフィーに用いられるもの,また熱現像紙は,湿式処理剤を用いず加熱(120~140℃)するだけで処理が終わるもので,マイクロフィルムからの引伸しやCRT記録材料用途等に用いられる。焼出印画紙はPOP(print-out paperの略)とも呼ばれ,大量の露光によって生ずる焼出銀で画像を得るもので,現像を必要としない。いわゆる日光写真に用いられるのがこれである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「印画紙」の意味・わかりやすい解説

印画紙
いんがし
photographic paper

陰画から焼き付け現像処理を経て陽画をつくる写真感光紙。感度の遅い塩化銀乳剤の密着用印画紙(ガスライト紙),感度の速い臭化銀乳剤の引き伸ばし用印画紙(ブロマイド紙),両者の中間的感度を有する塩臭化銀乳剤の引き伸ばし用印画紙(クロロブロマイド紙)があり,今日ではカラー印画紙も広く普及している。写真術初期の鶏卵紙をはじめ,POP,アリスト白金紙はゼラチンまたはコロジオン乳剤を原紙に塗布した焼き付け印画紙(→焼出し印画紙)である。近年は,支持体である紙の両面をポリエチレンで被膜したものが多くなりつつある。このタイプの印画紙は支持体の紙の吸水がないので,水洗時間,乾燥時間が短くてすみ,迅速な現像処理ができるという利点がある。デジタルカメラの普及により,写真フィルムと同様に印画紙の種類も減少している。

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百科事典マイペディア 「印画紙」の意味・わかりやすい解説

印画紙【いんがし】

紙を支持体として写真乳剤を塗布したもの。支持体の加工方法により,プラスチックコーティングされたRCペーパーとバライタ層をもつバライタ紙がある。
→関連項目感光材料写真複写密着印画

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化学辞典 第2版 「印画紙」の解説

印画紙
インガシ
photographic paper

写真法で陰画から陽画をつくるために用いる感光紙.支持体としてポリエチレンラミネート紙あるいはバライタ紙が用いられる.黒白写真用では,支持体上に数 μm の厚さに写真乳剤を塗布し,1 μm 以下のゼラチン層を保護層として設ける.感光主剤として,低濃度の密着焼付用印画紙には塩化銀(粒径0.1 μm 程度),高感度の引伸し用印画紙には塩臭化銀または臭化銀(0.2~0.5 μm)を用いる.カラー写真用では,イエローに発色する青色感光層,マゼンタに発色する緑色感光層,シアンに発色する赤色感光層の3層に分け,各発色層の間に中間層を塗布している.

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「印画紙」の意味・わかりやすい解説

印画紙
いんがし

写真印画紙

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