化学辞典 第2版 「塩化タングステン」の解説
塩化タングステン
エンカタングステン
tungsten chloride
【Ⅰ】塩化タングステン(Ⅱ):WCl2(254.75).二塩化タングステンともいう.WCl4を熱分解するか,WCl4を水素気流中で加熱還元すると得られる.灰色の無定形粉末.密度5.44 g cm-3.強い還元性をもち空気中で不安定である.水と反応して水素を発生する.[CAS 13470-12-7]【Ⅱ】塩化タングステン(Ⅳ):WCl4(325.65).四塩化タングステンともいう.WCl6を水素または二酸化炭素気流中で熱分解して得られる.灰褐色の結晶.密度4.624 g cm-3.空気を断って熱するとWCl2とWCl5に分解し,潮解性をもち水により分解する.[CAS 13470-13-8]【Ⅲ】塩化タングステン(Ⅴ):WCl5(361.11).五塩化タングステンともいう.WCl6を水素気流中で繰り返し蒸留して還元し,さらに二酸化炭素気流中で分留することにより得られる.黒色の針状晶.密度3.875 g cm-3.融点248 ℃,沸点275.6 ℃.空気中で熱するとWOCl4となる.吸湿性が強く(潮解性),水により分解する.[CAS 13470-14-9]【Ⅳ】塩化タングステン(Ⅵ):WCl6(396.56).六塩化タングステンともいう.酸素を含まない塩素気流中で金属タングステンを熱するか,四塩化炭素中で三塩化タングステンと塩素を反応させると得られる.暗紫色.等軸晶系に属する結晶.密度3.52 g cm-3.融点275 ℃,沸点346.7 ℃.純粋なものは湿った空気中で変化せず,60 ℃ 以下の水にも不溶,エタノール,エーテル,クロロホルム,四塩化炭素,二硫化炭素に可溶.重合触媒,炭化タングステンの製造などに用いられる.[CAS 13283-01-7]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報