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…しかし結局は自然に向けての詠嘆と抒情に流れたのも,長い日本の詩歌の伝統からすれば当然のなりゆきであったろう。T.グレーの《墓畔の哀歌》(1751)は,自然のなかの哀愁,人生の無常性についての瞑想など,もともと日本人ごのみの要素を含むのだが,それが〈山々かすみいりあひの/鐘は鳴りつつ野の牛は……〉(1882,矢田部良吉)という七五調に移しかえられて愛誦されたのは,示唆的なことである。さらに大正期の好みは,いっそう純粋に個人的なフランス象徴派にはっきり傾斜していった。…
…古典学者らしい抑制のきいた措辞は,新しく自然に向かって開かれたみずみずしい感性をひそめ,寡作ながら当代を代表する詩人となった。とくに《墓畔の哀歌》(1751)は彫琢(ちようたく)の名詩である。たまたまその自然や人生に対する無常感が日本人の好みにも合って,〈山々かすみいりあひの/鐘は鳴りつつ野の牛は……〉で始まる新体詩訳(1882年,矢田部良吉)も世に問われ,人びとに親しまれた。…
※「墓畔の哀歌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」