日本大百科全書(ニッポニカ) 「声変わり」の意味・わかりやすい解説
声変わり
こえがわり
小児の声は思春期になると声帯が変化して大人の声に変わるが、この変化は3~12か月くらいの比較的短期間におこる。この現象を声変わり、または変声という。変化が始まる年齢は、人種、気候、生活環境、個人差などによってかならずしも一定ではないが、日本人では小学校の高学年でみられることが多い。女子は男子よりやや早い。この期間中、声は不安定で、つやがなく、かれたり異様な響きを伴うことが多い。とくに男子でこの現象は著明であるが、女子でもみられる。この期間が過ぎると、男子では声域がやや広がり、全体として約1オクターブ低下する。女子では声域がやや広がり、声のつやが生じて女らしい声になる。この現象は性腺(せん)の発達に関係しており、第二次性徴の一つである。すなわち、甲状軟骨などの喉頭(こうとう)の外郭組織が急速に発達するのに対して、声帯などの喉頭内部にある組織の発達が追随できないため、声の性質が不安定になるわけである。
声変わりの期間中は無理な発声をすることを避けるとともに、心身の摂生が必要である。もしも声変わりが正常に経過しないと、音声障害を残すようになる。このような音声障害を声変わり障害という。長年月にわたって声変わり時期と同じような不安定な声が続いたり、成人になっても子供のような発声をする。
[河村正三]