外反肘と内反肘

六訂版 家庭医学大全科 「外反肘と内反肘」の解説

外反肘と内反肘
(外傷)

外反肘

 肘関節は、伸ばした際に正面から見ると5~15度程度やや外側に「く」の字に曲がっています。これは生理的外反と呼ばれ、正常な状態です。この外反が極端に曲がっている状態が外反肘で、なかには45度以上も外反していることがあります。

 外反肘のほとんどは、子どものころの上腕骨外顆(じょうわんこつがいか)骨折によるものです。骨折の治療が不適切だったために、肘の外側の外顆部分の骨が癒合せず偽関節(ぎかんせつ)になり、外側の成長障害を起こしたことが原因です。偽関節になっても、変形のみで通常は痛みが残ることはなく、そのまま放置されることも少なくありません。しかし、成人になってから小指のしびれや麻痺が生じることがあります。これを遅発性尺骨神経麻痺(ちはつせいしゃっこつしんけいまひ)といい、肘が強く外反し、かつ不安定なため、肘の内側を走る尺骨神経が徐々に障害されて起こります。

 遅発性尺骨神経麻痺は、骨折後20年以上も経過して発症することも多く、その場合は神経移行術と、可能であれば偽関節の癒合手術を行います。

内反肘

 外反肘とは逆に、内側に「く」の字に曲がっている状態を内反肘と呼びます。

 内反肘の原因は、生まれつきのものと、骨折後の後遺障害とがあります。生まれつきの場合は比較的少なく、上腕骨内側の滑車(かっしゃ)と呼ばれる部分が小さい(滑車形成不全)ことが原因です。

 内反肘の大多数は、子どものころの上腕骨顆上(じょうわんこつかじょう)骨折が原因で、骨折部位で内側に傾き、さらにねじれて癒合したために内反肘変形が生じたものです。15度以上の内反変形が生じると見かけ上の変形が目立ち、矯正手術を行ったほうがよい場合があります。まれに、内反肘を放置すると尺骨神経障害、肘関節の動揺関節などが生じることがあります。

 通常の顆上骨折による内反肘は、骨の癒合後に変形が進行することはありません。しかし、類似の骨折で上腕骨遠位骨端離開(えんいこつたんりかい)という成長線の骨折では内反変形が徐々に進行する場合もあり、注意を要します。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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