外国人研修・技能実習制度(読み)がいこくじんけんしゅうぎのうじっしゅうせいど(英語表記)skill training system for foreigners

知恵蔵の解説

外国人研修・技能実習制度

先進国としての日本が発展途上国経済発展に人的面で寄与しうる方策の1つとして、発展途上国技能または知識の移転を図り、経済発展を担う人づくりに協力する広義の研修制度。1993年4月1日から実施。発展途上国などから来日する外国人が、技術・技能などの実践的錬成に相当の期間を要する職種について、一定期間の研修を受ける。その後、技能について所定の評価を得た者は、研修を受けた機関(企業など)と同一の機関で雇用関係の下での実習(在留資格「特定活動」)を認められ、日本人と同等の待遇を受けつつ、帰国後は本人の就業及び母国の経済社会の発展に役立つ技能を修得することを目指す。滞在期間は研修期間を合わせて3年以内に限定。研修成果などの評価、修得技能の認定、技能実習修了認定証発行などの業務は国際研修協力機構が行う。しかし現実には、不熟練労働分野への外国人労働者受け入れ禁止の政府方針の下で、安いコストで外国人労働者を雇用したいという産業側の要求に応えてできた折衷的制度であるために、運用面でも透明度を欠き、悪用される例が極めて多い。そのため制度の抜本的改革が急務となっている。

(桑原靖夫 獨協大学名誉教授 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

外国人研修・技能実習制度

国際貢献の一環として、企業や団体が途上国から外国人を受け入れる制度で、1993年に始まった。1年間の研修後、技能検定に合格すれば、技能実習生としてさらに2年間滞在できる。出身国は中国が最も多く、次いでベトナムインドネシアなど。農業漁業、建設、機械・金属製造などの職種に分かれている。実習生らが実質的に低賃金労働者として扱われているとの批判もある。

(2012-12-06 朝日新聞 朝刊 2外報)

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人事労務用語辞典の解説

外国人研修・技能実習制度

開発途上国への技術・技能・知識などの移転を目的として、18歳以上の外国人を日本企業に受け入れる制度。帰国後、彼らが母国の経済発展や産業振興の担い手として活躍できるように設けられ、日本の国際貢献のための重要な政策とされてきましたが、受け入れ企業の悪用が後を絶ちません。
(2007/6/18掲載)

出典 『日本の人事部』人事労務用語辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

外国人研修・技能実習制度
がいこくじんけんしゅうぎのうじっしゅうせいど

開発途上国における経済発展や産業振興の担い手となる人材の育成を目的に、18歳以上の外国人の受入れを支援し、日本の産業や職業の技術、技能、知識の修得を目ざす制度。期間は最長3年。外国人研修生は、実務と座学からなる1年間の研修制度を経て、技能検定基礎2級合格などの一定の条件を満たすと、日本での2年間の在留資格が認められる。認定を受けた研修生は、研修先と同じ企業で報酬を伴う雇用関係を結び、実践的な実務に携わる技能実習制度へ移行する仕組みになっている。研修生の受け入れから帰国までの滞在期間中は、各種の申請や研修成果などの評価、技能実習の認定証発行などといったすべての業務を、公益財団法人国際研修協力機構(JITCO:Japan International Training Cooperation Organization)が行う。
 外国人の日本国内での研修制度については、日系企業の海外進出が盛んになる1960年代ごろから、企業の求める声が強まった。現地法人やその取引先の社員を日本で一時的に研修させた後で現地に戻し、修得した知識や技術で活躍することを期待したためである。こうした状況を受けて政府は、1981年(昭和56)に入管法(出入国管理及び難民認定法)を改正し、外国人研修生を受け入れるための在留資格を創設した。1990年(平成2)に研修制度の枠組みができると、1993年には、研修修了後に雇用関係のもとで企業実習を続ける技能実習制度を創設した。しかし、同制度を利用して日本を訪れた研修生や技能実習生に対し、実質的な低賃金労働者として差別的に働かせ、旅券や預金通帳を取り上げるなど、悪質な人権侵害行為が一部の企業によって行われていたことが露呈した。そのため、2010年(平成22)に制度の一部が改正され、法的保護や在留資格の見直しが行われたが、受入れ企業による制度悪用には歯止めがかかっていない。
 2014年には国連自由権規約委員会によって、低賃金労働者の確保ではなく能力養成を目的とした制度への抜本的な見直しを検討すべきとの見解が示された。2015年においても厚生労働省の調査では、賃金の不払いや長時間労働といった不正行為、人権侵害などが確認された受入れ先は増加傾向にある。こうした状況に対して、2016年11月に外国人技能実習制度適正化法(正式名称「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」平成28年法律第89号)が成立した。この法律では、長時間労働や人権侵害行為などを防ぐことを目的として、法務省と並んで日本の受入れ団体や企業を監督する機関として、厚生労働省所管の認可法人である外国人技能実習機構が新設され、そのうえで優良な受入れ先に対し実習期間を従来の最長3年から最長5年まで延長可能にする、人数枠を2倍程度まで増加するなどの拡充が図られた。また、改正入管法では在留資格に、日本の介護福祉士の国家資格取得を前提とした介護の職種が追加され、技能実習の職種も従来の機械、繊維、建設関係などに介護を加えた75職種となった。
 法務省によれば、技能実習生は毎年増加する傾向にあり、2016年6月時点で全国に約21万人が在留する。このうち中国からの実習生が最多でおよそ8万5000人に上り、ついでベトナム約7万人、フィリピン約2万人と続く。[編集部]

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