国指定史跡ガイド 「多久聖廟」の解説
たくせいびょう【多久聖廟】
佐賀県多久市多久町にある廟。市内東南に位置する椎原(しいはる)山の西側に所在する。儒学の祖である孔子を祀るために1708年(宝永5)に多久4代邑主(ゆうしゅ)、多久茂文(しげふみ)によって創建された。湯島聖堂(東京都)、足利学校(栃木県)や閑谷(しずたに)学校(岡山県)の聖廟とともに、著名なこの建物には、他の孔子廟には見られない、中国風のさまざまな文様が多く描かれており、1921年(大正10)に国の史跡に、1933年(昭和8)に重要文化財に指定された。茂文は人材育成に重きを置いた人物で、東原庠舎(とうげんしょうしゃ)と呼ばれる学問所を建て、身分制度の厳しかった江戸時代には珍しく、学を志す者なら身分を問わずに受け入れたといわれている。孔子像を安置する聖廟の内外に彫刻されている鳳凰(ほうおう)や麒麟(きりん)、象、龍などの聖獣は、政治や教育が行き届き、平和で豊かな社会が訪れるとされている動物。天井には、絵師御厨夏園(みくりやかえん)による蟠龍(はんりょう)が描かれている。敷地内には聖廟資料館、東原庠舎などがある。JR唐津線多久駅から昭和バス「本多久」下車、徒歩約10分。