鳳凰(読み)ほうおう(英語表記)fèng huáng

精選版 日本国語大辞典 「鳳凰」の意味・読み・例文・類語

ほう‐おう ‥ワウ【鳳凰】

〘名〙
① 古代中国で、麟・亀・龍とともに四瑞の一つとして尊ばれた想像上の瑞鳥。形は、前は麟、後ろは鹿、頸は蛇、尾は魚、背は亀、頷(あご)は燕、嘴(くちばし)は鶏に似て、高さ五、六尺(一・五~一・八メートル)、羽には五色の紋がある。梧桐に宿り、竹の実を食し、醴泉(れいせん)の水を飲んで、聖天子出生の瑞兆として出現すると伝えられた。雄を鳳、雌を凰と分けて称することもある。鳳鳥
※性霊集‐三(835頃)贈伴按察平章事赴陸府詩「麒麟不踏昆虫、鳳凰来巣阿閣」 〔詩経‐大雅・巻阿〕
② 紋所の一つ。①の姿を図案化したもので、鳳凰の丸、桐に鳳凰などがある。
※竹むきが記(1349)上「萩戸の御調度は桐竹とほうわう也」
③ 香木の名。二百種名香の一つ。
④ (裲襠(うちかけ)金糸で①を刺繍したものを着ていることが多かったところから) 江戸時代、吉原遊郭で、太夫職の遊女の称。鳳鳥。ほうお。
※雑俳・柳多留‐二八(1799)「鳳凰か一日鷺に化て出る」

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デジタル大辞泉 「鳳凰」の意味・読み・例文・類語

ほう‐おう〔‐ワウ〕【××凰】

古代中国で、りん・亀・竜とともに四瑞として尊ばれた想像上の霊鳥。体は、前はりん、後ろは鹿しかくびは蛇、尾は魚、背は亀、あごはつばめくちばしは鶏に似るといわれる。羽が5色で、梧桐ごとうに宿り、竹の実を食べ、醴泉れいせんを飲むと伝えられ、聖徳の天子の兆しとして世に現れるとされる。鳳は雄、凰は雌という。
紋所の名。1を図案化したもの。鳳凰丸や桐に鳳凰などがある。

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改訂新版 世界大百科事典 「鳳凰」の意味・わかりやすい解説

鳳凰 (ほうおう)
fèng huáng

中国の伝説上の霊鳥。鳳が雄,凰が雌。鳳皇とも書く。餌は竹の実で,梧桐の木にしか止まらぬとされる。殷墟卜辞に,風神として鳳の字が用いられ,天帝の使者だともされている。その字体から見て,孔雀のような鳥が鳳凰の原像となったのであろう。この殷の鳳凰と同じ特徴的な冠羽を持つ鳥が,殷末から西周期の青銅器の文様に見え,おそらくこれは,鳥形をとって祭祀の場に降臨する祖霊の観念と結びついていたのであろう。《書経》に,舜帝が天下を安定させると,音楽につれて祖霊とともに鳳凰がやってきたとあるのは,祖霊と祥瑞との二つの性格をあわせみせている。天下太平の瑞徴としての鳳凰は,特に漢代以降盛んに出現するようになり,その出現に際して改元が行われたりもする。なお《大戴礼記》(《大戴礼》)に,鳥類は360種から成るが,その長(かしら)が鳳凰だとあるように,鳳凰の基本的な性格は超越的な鳥ということにあり,《礼記(らいき)》では四霊の一つに数えられ,四神の内の朱雀の内にその性格が受けつがれていることは,漢代の緯書が鳳凰を火精だとしていることからも逆にうかがわれよう。また鳳は竜と組み合わされて,竜が男性を,鳳が女性を象徴する。皇后鳳冠をつけるのも,その一つの表れである。
執筆者:

四神は,飛鳥時代には日本に伝えられていたと思われる。鳳凰は奈良時代には多種多様な表現で,染織品,鏡,櫃(ひつ)などの漆工品を飾っている。法隆寺金堂西の間の天蓋に付された鳳凰は,白鳳文化の簡潔な力強さを示す優品である。〈瑞花鳳凰八稜鏡〉など平安時代の鏡背に表されたものの中には,唐風を継承するだけでなく和風化の跡(唐草から日本の草へ,鳳凰から尾長鳥や鶴へと変化する)もみとめられる。藤原時代の平等院鳳凰堂の棟の両端には高さ1mの銅製鳳凰があげられている。以後,中世近世を通じて蒔絵箱,能装束などの意匠に好んで取り入れられたが,中国以来の桐と竹との組合せが,しだいに桜,牡丹,菊など四季の草花との組み合わせに変化していく点も興味深い。紋章には〈鳳凰丸〉〈立ち鳳凰〉〈飛び鳳凰〉がある。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鳳凰」の意味・わかりやすい解説

鳳凰
ほうおう

中国古代の想像上の瑞鳥(ずいちょう)。鳳凰は麒麟(きりん)、亀(かめ)、竜とともに四霊の一つに数えられ、徳の高い君子が天子の位につくと出現するというめでたい禽鳥(きんちょう)と考えられた。たとえば、太古の聖帝である黄帝(こうてい)が天下を治めたときには宮廷に鳳凰が飛来し、麒麟が郊外で戯れたと伝えられ、同じく聖帝の1人である舜(しゅん)の治世にも、ふたたび鳳凰が現れたとされている。梧桐(ごとう)の木に宿り、竹の実を食べ、醴泉(れいせん)を飲むと伝えられ、雄を鳳、雌を凰と分けて称することもある。鳳凰の姿は麒麟や竜と同様、時代が下るにつれてすこぶる奇怪な姿となっていった。『山海経(せんがいきょう)』によると鳳凰の外形はニワトリのようで、羽毛は五色に彩られ、体の各部にはそれぞれ徳(首)、義(翼)、礼(背)、仁(胸)、信(腹)の字が浮かび出ていたという。鳳凰が多色の鳥と考えられたのは、中国にもたらされたクジャクの影響によるとする説もあるが、鳳の字がすでに殷(いん)代の甲骨文字にみえ、風の神として祭祀(さいし)の対象となっていることから、これが鳳凰の原型と思われる。

[桐本東太 2017年8月21日]

鳳凰文

日本には古墳時代末期に中国六朝(りくちょう)より鳳凰文が伝えられ、以後今日まで吉祥(きちじょう)模様として各種の工芸意匠に賞用された。奈良県桜井市穴師珠城山(あなしたまきやま)3号墳から出土した古墳時代の『金銅製双鳳文透彫杏葉(ぎょうよう)』(奈良国立博物館)は、わが国最古の鳳凰文の一つである。鳳凰文には、「鳳凰の丸」のように単独に表されているもののほかに、「双鳳(そうほう)」として左右相称の形式をとるもの、あるいは桐・竹・牡丹(ぼたん)などと組み合わせて表されるものなどがある。

村元雄]

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普及版 字通 「鳳凰」の読み・字形・画数・意味

【鳳凰】ほうおう(わう)

ほうおう。瑞鳥。唐・李白〔金陵の鳳凰台に登る〕詩 鳳凰臺上、鳳凰ぶ 鳳去り、臺しうして、江自(おのづか)ら

字通「鳳」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「鳳凰」の意味・わかりやすい解説

鳳凰【ほうおう】

中国で麒麟(きりん)・竜・亀とともに霊獣視された瑞鳥(ずいちょう)。雄を鳳,雌を凰といい,聖徳の天子の代に現れるとされる。《説文解字》では首は蛇,尾は魚,頷(あご)は燕,喙(くちばし)は鶏,背は亀に似て,五色の模様の羽根をもつとされる。後漢代から種々の装飾・工芸品・文様などにもその姿が用いられた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鳳凰」の意味・わかりやすい解説

鳳凰
ほうおう

空想上の鳥の名。古来中国で麒麟,亀,竜とともに四瑞として尊ばれた。嘴は鶏,顎はつばめ,背中が亀,尾は魚,首はへび,前部が麒麟,後部がしかに似て,聖徳の天子の兆しとして出現すると伝えられる。鳳は雄,凰は雌。仏教とともに日本に伝来,瑞祥文様 (瑞祥はめでたいしるし) として用いられる。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「鳳凰」の解説

鳳凰 (ホウオウ)

動物。伝説上の鳥

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