多重子説(読み)タジュウシセツ

化学辞典 第2版 「多重子説」の解説

多重子説
タジュウシセツ
multiplet hypothesis

1927年,A.A. Balandinによって提唱されたもので,触媒活性に関する説の一つ.この説の基本的仮定は,
(1)反応分子はある部分で触媒吸着中心に吸着され,結合の弱化を生じる.
(2)活性中心は一定数の吸着中心の組合せであり,その数によって2重子,4重子,6重子などとよび,一般に多重子という.
吸着にあたって結合を生じるとき,分子の結合角,表面と分子内原子の結合距離などの幾何学的適合のよい表面であることが必要な条件となる.シクロヘキサン脱水素反応において,炭素環の平面吸着に適合する(111)面をもつニッケルから白金までの面心立方格子金属,および六方最密充填構造をもつオスミウムなどの高い活性がよく説明される.この説は暗黙のうちに,比較的低指数の格子面または切り子面(facet)に活性点をおいているので,格子面活性の考えのなかに包含される.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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