活性中心(読み)カッセイチュウシン

化学辞典 第2版 「活性中心」の解説

活性中心
カッセイチュウシン
active center

固体触媒の表面にあって触媒作用をもつ特定の場所をいう.1925年,H.S. Taylorによって提唱された基本的概念である.触媒作用は,それまで毛管凝縮などによる反応分子の表面濃度の増大にもとづいて,反応を促進させるものと考えられていたが,この説により,表面上で結合の不飽和度の高い原子などの上に反応分子が吸着し,反応が進行するとされた.この考えは,表面の小部分を覆う程度の微量の毒物分子(触媒毒)の結合によって触媒作用が失われる場合があること,触媒作用が表面構造に敏感であり,加熱などの処理によりいちじるしく活性が変化することや,吸着量が増すにつれて,吸着熱が急激に減少する事実から支持された.この活性中心の考えはA.A. Balandinによる多重子説や,O. Beeckらを中心とした格子面活性説と対照的である.活性中心説はA. Smekalによる格子欠陥活性,G.M. Schwabによる界線活性の考えに発展した.活性点となる部分の構造は,反応分子の吸着や反応に適合することからみて,反応によって異なると考えられ,現在では,空格子点,格子間原子などの点欠陥や転位の末端,表面のステップやキンクが反応によって活性中心となるとみられ,触媒活性との定量的関係が研究されている.


活性中心(酵素の)
カッセイチュウシンコウソノ
active center of enzyme

酵素分子上の領域で,反応を触媒する部位基質結合部位や補酵素結合部位の一部と重なることが多い.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「活性中心」の意味・わかりやすい解説

活性中心 (かっせいちゅうしん)
active center

不均一系触媒反応で固体触媒の働きを説明するために,1925年イギリスのテーラーH.S.Taylorは,触媒表面の特別な部分,たとえば原子配列の不規則な部分などが,反応分子を吸着し反応をひき起こす活性点として働くと考え,これを活性中心と呼んだ。この考えは触媒の被毒焼結による触媒活性の低下などを説明できるので,よく用いられている。しかし,一般に固体触媒の働きはかなり複雑で,触媒表面が一様に働くと考えられる場合があり,また活性中心の構造が明らかでない場合も多い。一方,生体系で触媒として働く酵素は数万以上の分子量をもつタンパク質主成分とするが,反応に直接関与する部分を活性中心という。酵素の活性中心は,反応分子(基質)と選択的に結合する部分(基質結合部位)と触媒作用を示す部分(反応部位)からなり,酵素が示す高い基質選択性の原因となっている。
酵素 →触媒
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

栄養・生化学辞典 「活性中心」の解説

活性中心

 活性部位ともいう.酵素と基質が特異的に結合して触媒反応が起こる酵素の部位.活性中心は,酵素が基質と結合する部位(基質結合部位)と化学反応を触媒する触媒部位に分けることがある.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の活性中心の言及

【酵素】より

…生命の存在するところ,単細胞生物である微生物から,多細胞生物である植物,動物,そして人間にいたるまで,酵素はあらゆる生体の中で生命の営みに不可欠の存在である。酵素の主成分であるタンパク質は,各生物固有のDNAの遺伝情報に基づいて,約20種類のL型α‐アミノ酸がNH2末端から順次ペプチド結合によって連結されることによって合成されたポリペプチド鎖が,構成アミノ酸残基の側鎖間相互作用によって三次元の立体構造を形成することになるが,酵素タンパク質は他の構造タンパク質,たとえば筋肉タンパク質や膜タンパク質と異なり,分子の一隅に活性中心を備えている。酵素の中にはまた,タンパク質以外に,金属イオン,特定の有機化合物としての補酵素,無機陽イオン・陰イオンなどの非タンパク質性分子やイオンを,その活性発現や構造保持に必須とするものも少なくない。…

※「活性中心」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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