国指定史跡ガイド 「大中の湖南遺跡」の解説
だいなかのこなみいせき【大中の湖南遺跡】
滋賀県近江八幡市安土(あづち)町下豊浦にある集落跡。琵琶湖東岸、かつての琵琶湖最大の内湖(ないこ)である大中の湖付近に位置し、1964年(昭和39)の大中湖干拓事業によって発見された弥生時代中期初頭の農耕集落遺跡。発掘調査の結果、集落跡や水田跡、木製の農耕用具類など初期の稲作の様子がうかがえる遺跡が出土し、大中の湖での漁を示す漁具や弓などの狩猟具、容器類や祭祀具なども多数発見された。住居や大溝による水田地域が広がり、矢板や杭によって畦(あぜ)が設けられているところもある。このように、古代に営まれた生活を再現する貴重な資料であることから、1973年(昭和48)に国の史跡に指定された。その後の調査では、突堤とおぼしき遺構も発掘されている。琵琶湖の周辺には、かつて大小約40の内湖と呼ばれる湖があったが、戦後の食糧増産政策によって約15の内湖が干拓されており、大中の湖南遺跡を含めて琵琶湖沿岸からは古代の遺跡が数多く発見されている。現在は弥生時代の住居も再現されて古代の生活を体験できる史跡公園として整備され、安土城考古博物館には多くの出土品が展示されている。JR東海道本線安土駅から車で約10分。