日本大百科全書(ニッポニカ) 「大圏航法」の意味・わかりやすい解説
大圏航法
たいけんこうほう
地球上の二地点間を最短距離で航海する場合の航法。地球は回転楕円(だえん)体であるから測地線に沿う距離がもっとも短いが、地球の扁平率は297分の1ときわめて球に近い形をしているので、航法上は地球を球と考え、二地点間の最短航路を両地を通る大圏としても、測地線との差は小さい。大圏航法は大洋横断時の基本的航法である。大圏と子午線との交角は大圏上の位置によって変化する( 参照)ので、厳密に大圏上を航海するには絶えず針路をすこしずつ変えねばならず非実際的である。そこで航海に使用する漸長図上に大圏を描き、半日または一昼夜程度は一定の針路で航走し、これらの折れ線がほぼ大圏に沿うように航海する( 参照)。大圏を漸長図上に描き、大圏距離や大圏航路上の最高緯度を求めるには球面三角法によるが、すべての大圏が直線で表される大圏航法図を利用することもできる( )。大圏航法による距離の短縮が著しいのは高緯度で、針路が東西に近く、遠距離の場合である。しかし大圏上の最高緯度が高すぎて、強風、波浪、流氷など、気象・海象上の障害が大きく、大圏上を航海するとかえって不利になるとか、航路上に陸地の存在することもある。このような場合は、適当な最高緯度を定め、航海の安全と距離の短縮を両立させる集成大圏航法による( )。
[川本文彦]