距離（読み）キョリ

デジタル大辞泉

きょ‐り【距離】

１ 二つの場所や物事の間の隔たり。「前の車との距離を縮める」「考え方に距離がありすぎる」
２ 人との関係で、相手に対する気持ちの上での隔たり。「距離を置いてつきあう」「相手の態度に距離を感じる」
３ 数学で、二点を結ぶ線分の長さ。また、二つの図形上の点を結ぶ線分のうちの最短のものの長さ。
[類語]（1）隔たり・間隔（ある地点までの距離）道のり・道程どうてい・路程・里程・行程・航程（物事の間の隔たり）径庭・懸隔・開き・幅・横幅・歩幅・振幅・間・間合い・あいだ・合間・時間・インターバル

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

きょ‐り【距離】

1. 〘 名詞 〙
2. ① 二つのものや場所の間のへだたり。〔和蘭字彙（1855‐58）〕
   1. [初出の実例]「おれの足音を聞きつけて、十間位の距離に逼った時」(出典：坊っちゃん（1906）〈夏目漱石〉七)
3. ② ( 比喩的に ) 人とのつきあいの上でのへだたり。人とつきあう場合に、相手に対して感じる気持のへだたりや、意識的に言葉や態度に表わすよそよそしさなどをいう。
   1. [初出の実例]「君と交(まじは)るに、多少の距離(キョリ)を保留して置くやうにした」(出典：二人の友（1915）〈森鴎外〉)
4. ③ ( 数学で )
   1. (イ) 二点間のへだたり。二点を結ぶ線分の長さ。〔数学ニ用ヰル辞ノ英和対訳字書（1889）〕
   2. (ロ) 距離空間の計量によって、その二点に対応する実数の、その二点に対する称。

出典　精選版 日本国語大辞典

日本大百科全書(ニッポニカ)

距離
きょり

数学では、以下のようないろいろな場合に分けて距離を定義する。(1)2点間の距離　2点A、Bを結ぶ線のなかでもっとも短いのは線分ABで、その長さが2点A、B間の距離である。(2)点と直線の距離　点Aと直線l上の任意の点とを結ぶ線のなかでもっとも短いのはAからlへ下ろした垂線AHで、その長さをAとlの距離という。(3)点と平面の距離　点Aと平面α上の任意の点とを結ぶ線のなかでもっとも短いのは、Aからαへ下ろした垂線AHで、その長さをAとαの距離という。(4)平行2直線の距離　平行な2直線l、mについて、両方に垂直な直線がl、mと交わる点をA、Bとすると、線分ABの長さは共通の垂線をどこにとっても一定である。この長さを平行2直線l、mの距離という。(5)平行2平面の距離　平行な2平面α、βについて、両方に垂直な直線がα、βと交わる点をA、Bとするとき、線分ABの長さを2平面α、βの距離という。(6)ねじれの位置にある2直線の距離　2直線をp、qとし、p上に任意の点P、q上に任意の点Qをとるとき、P、Qを結ぶ線のなかでもっとも短いのは、p、qの両方に垂直な線分PQで、これを2直線p、qの距離という。このときのp、qの両方に直交する直線PQはただ一つあって、p、qの共通垂線という。

［栗田　稔］

座標と距離

(1)平面上で、2点A、Bの直交座標が（a₁, a₂), (b₁, b₂）のとき、距離は、

空間で、2点A、Bの直交座標が(a₁, a₂, a₃), (b₁, b₂, b₃)のとき、距離は、

(2)直交座標で、点Pの座標が（x₁, y₁）、直線pの方程式がax＋by＋c＝0のとき、Pとpの距離PHは、

直交座標で、点Pの座標が（x₁, y₁, z₁）、平面αの方程式がax＋by＋cz＋d＝0のとき、Pとαの距離PHは、

である。

［栗田　稔］

出典　小学館　日本大百科全書(ニッポニカ)

改訂新版　世界大百科事典

距離 (きょり)
distance

三次元空間内の2点P，Qに対し，PをQに結ぶ線分PQの長さをPとQの距離という。直交座標によりP，Qをそれぞれ（x₁，y₁，z₁），（x₂，y₂，z₂）で表すとき，PとQの距離はで与えられる。空間内の二つの図形α，βに対し，αの点Pとβの点Qの距離の，P，Qをいろいろに動かしたときの下限をαとβの距離という。αが直線または平面のとき，α上にない1点Pとαの距離はPからαに下ろした垂線の長さに等しい。α，βがともに直線か平面で，αとβが交わらないとき，αとβの距離はαとβの共通垂線の長さに等しい。点（x₀，y₀，z₀）とax＋by＋cz＋d＝0（a，b，c，dは定数）で表される平面の距離はで　ある。曲面S上の2点P，Qに対し，PをQに結ぶS上の曲線の長さの，曲線をいろいろにとったときの下限をPとQのS上での距離という。Sが球面のときは，これはP，Qを通る大円上の劣弧の長さとなる。
執筆者：中岡 稔

出典　株式会社平凡社「改訂新版　世界大百科事典」

普及版 字通

【距離】きより

隔たり。

字通「距」の項目を見る。

出典　平凡社「普及版 字通」

世界大百科事典（旧版）内の距離の言及

【距離空間】より

…平面上の2点P,Qの距離をd(P,Q)で表したとき，次の3条件が成り立つ。(1)d(P,Q)≧0でかつP＝Qのときに限ってd(P,Q)＝0，(2)d(P,Q)＝d(Q,P)，(3)d(P,R)≦d(P,Q)＋d(Q,R)。…

【集合】より

…この立場の集合は単なる点の集りとしての集合ではない。ユークリッド空間を距離空間と考えて，その意味での位相や，長さ，面積，体積などを考慮に入れて考えたものである。したがって，多くの事柄が位相空間論へと一般化される。…

※「距離」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典｜株式会社平凡社「世界大百科事典（旧版）」