大酒大食会(読み)たいしゅたいしょくかい

改訂新版 世界大百科事典 「大酒大食会」の意味・わかりやすい解説

大酒大食会 (たいしゅたいしょくかい)

飲酒食事の量を競う飲みくらべ,食べくらべの催し。飲みくらべは闘飲,酒戦と呼び,食べくらべは闘食ともいう。いずれも平穏無事な社会の産物というべき遊びであるが,歴史的に最も古く,かつ著名なのは,911年(延喜11)6月15日,宇多法皇が催した亭子(ていじ)院での闘飲で,その日の様子を記録した紀長谷雄(きのはせお)の〈亭子院賜飲記〉が《本朝文粋(ほんちようもんずい)》に収められている。その後は長らくこうした記録は見られなくなるが,江戸時代に入ると盛んに行われるようになった。有名なものではまず1650年(慶安3)の酒戦がある。当時古今稀有(けう)の大酒とうたわれた江戸大塚の地黄坊樽次と武州大師河原の大蛇丸底深とがそれぞれ酒友門人をひきいて酒量を競い合ったもので,一方の大将であった樽次こと医師茨木春朔がその模様を《水鳥記》なる戯文にものしている。1815年(文化12)10月江戸千住の中屋六右衛門宅での酒戦記は平秩東作(へずつとうさく)が書いているが,17年3月23日に江戸柳橋の料亭万八楼で開かれたものは,まさに興行の名にふさわしい大酒大食会であった。この会は酒,菓子,飯,うなぎそばの5組に分かれて量を競ったが,それぞれの最高は,酒が3升入り杯で6杯半,菓子はまんじゅう50,ようかん7さお,薄皮餅30,飯は〈常の茶漬茶碗にて万年味噌にて茶づけ香の物ばかり〉で68杯,うなぎはこれも茶漬にしたが,代価金1両2分の蒲焼と飯が7杯,そばは平盛りの二八そばで63杯であったと,書家の関東陽が《兎園小説》に書いている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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