ウナギの代表的な料理。みりんじょうゆをつけながら焼く付け焼きの一種で,アナゴ,ハモ,ドジョウなどにも用いられる。室町期の《大草家料理書》に〈宇治丸かばやきの事,丸にあぶりて後に切也,醬油と酒と交て付る也,又,山椒味噌付て出しても吉也〉という一条がある。これがウナギの蒲焼の初見で,宇治丸というのは,はじめは宇治川産のウナギを指したが,やがてウナギの異名となり,ウナギのすしをもこの名で呼んだ。この蒲焼は,ウナギを裂かずに長いまま竹ぐしを通して焼いたもので,かまぼこ(蒲鉾)同様ガマの穂に形が似ていたための名であった。江戸初期になってウナギを裂いて開く手法が開発され,その結果として〈鎧の袖,草摺には似れど,蒲の穂には似もつかず〉(《傍廂(かたびさし)》)という形状になったが,蒲焼の名はそのまま現在まで踏襲されている。なお,〈かばやき〉は蒲焼ではなく,樺(かば)焼,あるいは香疾(かばやき)とする説が行われた。前者はウナギを焼くと皮が赤黒色を呈する,それがカバの樹皮に似ているための称とするもので,黒川道祐がこれを唱え,菊岡沾涼(てんりよう)(1680-1747)が同調している。後者は焼くにおいがはやく伝わるから〈香疾〉とするもので,山東京伝,小山田与清がこれを主張した。
執筆者:鈴木 晋一
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…漁法としては一本釣り,置鉤(おきばり),縄釣り,ウナギかき,ウナギ筒,引網,やな,待網などのほか,地方によりさまざまな小規模漁具を用いる方法もある。蒲焼,白焼き,酢の物,卵とじなどとして賞味され,肝臓,消化管は肝吸いとされる。 オオウナギA.marmorata(イラスト)はカニクイともいう。…
…その葉で編んだ円座(ほたん)やむしろから,それぞれ蒲団(ふとん),蒲簀(かます)(叺)などの名が起こり,またガマの穂綿(ほわた)に硫黄や硝石を混ぜて,火打の火をとるための〈ほくち〉が作られた。竹輪蒲鉾(ちくわかまぼこ)や蒲焼(昔はウナギの胴を開かず丸ごと串(くし)に刺して焼いた)の名はその穂の形による。 ヒメガマT.angustifolia L.はガマに似て,雄花群と雌花群の間に花のつかない裸出した軸の部分がある。…
…タイやカモの肉にほのかな木香(きが)をうつすというしゃれたもので,《日本永代蔵》はぜいたくきわまる料理という意味の〈いたり料理〉の一つにこれを挙げている。ウナギは蒲焼の調理法の革命的変化によって一躍万人の賞美するものになり,しぎ焼がシギそのものの焼鳥からナスの料理に変わったのも,きじ焼が同様にキジを材料とするものから豆腐の料理へ,さらに切身の魚の付け焼きへと変化したのも,江戸時代のことであった。 調理器具の発達によって,現代の焼物料理はいよいよ多様化したが,手法上は直火(じかび)焼きと間接焼きとに分類される。…
※「蒲焼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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