48字の仮名からなる最古の誦文(じゅもん)。作者不詳。平安中期の日本語の音韻体系を知る手がかりになる。「古事記」では61あった清音音節が48に減っている。「え」がア行の「衣」とヤ行の「江」の二つあることから,ほぼ天暦年間(947~957)以前の成立と推測される。あめ(天) つち(地) ほし(星) そら(空) やま(山) かは(川) みね(峰) たに(谷) くも(雲) きり(霧) むろ(室) こけ(苔) ひと(人) いぬ(犬) うへ(上) すゑ(末) ゆわ(硫黄) さる(猿) おふせよ えのえを なれゐて 最後の12文字には「生ふせよ 榎の枝を 馴れ居て」と「負ふ 為よ 江の(良篦) 衣を(愛男) 汝 偃(ゐで)」の2案がある。「宇津保物語」の国譲の巻に手習いの手本として「あめつち」があり,「源順(したごう)集」に「あめつち」の各文字を詠みこんだ歌があることから,当時は広く流布したと思われる。ただし,ほどなく1音節少ない「いろはうた」にその位置を譲ったとされる。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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