日本大百科全書(ニッポニカ) 「天皇摂関大臣影」の意味・わかりやすい解説
天皇摂関大臣影
てんのうせっかんだいじんえい
鎌倉時代の絵巻。3巻。御物。「天子摂関御影」ともいう。第1巻は鳥羽(とば)天皇から後醍醐(ごだいご)天皇までの21代の天皇、第2巻は法性寺(ほっしょうじ)関白(藤原忠通(ただみち))以下30人の摂政(せっしょう)関白、第3巻は藤原実忠(さねただ)以下80人の大臣の肖像を描き連ね、横に各像主の名を記す。顔の個性描写に力を注ぎ、色彩の濃厚なものがあるが、画風は概して線描の働きが顕著である。第1巻の鳥羽天皇から後二条(ごにじょう)天皇までは藤原為信(ためのぶ)(信実(のぶざね)の曽孫(そうそん))筆、次の花園(はなぞの)天皇、後醍醐天皇の2代は豪信(ごうしん)(為信の孫)の描き継ぎ、第2、第3巻も豪信の筆と伝えている。似絵(にせえ)の典型的作例で、史料的にも価値が高い。
[村重 寧]
『小松茂美編『続日本絵巻集成 18 天子摂関御影他』(1983・中央公論社)』