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天皇を補佐して政務を執行する職。執柄(しつぺい),博陸(はくろく),霍光(かくこう)ともいう。中国前漢の宣帝が霍光に対し,〈諸事皆まず関(あずか)り白(もう)すべし〉と命じたのに由来するが,日本では宇多天皇が887年(仁和3)太政大臣藤原基経に対して下した詔に関白の語がみえるのが初例。なお884年(元慶8)に光孝天皇が基経に下した勅に,のちの関白と実質を等しくする語句のあることから,これを関白の起源とする説もある。基経の没後,宇多・醍醐両天皇は摂政・関白を置かなかったが,朱雀天皇が幼少で践祚するや,藤原忠平が摂政となり,ついで天皇元服後に関白に補されて以来,これが例となった。ことに冷泉天皇のとき藤原実頼が関白に補されてからは,明治維新に際して廃止されるまでほとんど摂政・関白を置き,関白は基経以下延べ182人,実員116人を数えた。関白の補任は,摂政の場合と異なり,天皇の外戚であることは資格にならないが,(1)藤原氏北家の出身,(2)大臣または前大臣であるのを資格とした。なお豊臣秀吉・秀次が関白になったのは(1)の原則に合わないが,秀吉は関白補任に際しては近衛前久の猶子となり,平姓を改めて藤原姓を称している。1867年(慶応3)に摂政・内覧とともに廃された。
→摂政 →太閤(たいこう)
執筆者:米田 雄介
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天皇を補佐し、百官を率いて大政を執行する重職。中国前漢の博陸侯霍光(はくろくこうかくこう)が幼帝を補佐した故事により、博陸ともいう。百官の上奏に関(あずか)り、意見を白(もう)すという意味で、887年(仁和3)宇多(うだ)天皇が太政(だいじょう)大臣藤原基経(もとつね)に賜った勅書にこのことばが初めてみえ、しだいにその職名となった。冷泉(れいぜい)天皇(在位967~969)のころから、天皇幼少の間は摂政(せっしょう)を、成長後は関白を置くのが慣例となり、事実上朝廷最高の地位となって、「一(いち)の人(ひと)」ともよばれた。なお制度上は、摂政が天皇の代理人的立場にあるのに対し、関白は補佐の地位にとどまるが、政治上の実権にはほとんど差異を認められない。
摂関の職は藤原氏北家(ほっけ)に独占され、藤原氏長者(ちょうじゃ)を兼帯するのが常例となり、ことに藤原道長(みちなが)以後はその子孫に伝えられ、鎌倉時代以降は近衛(このえ)、九条(くじょう)、二条、一条、鷹司(たかつかさ)の五摂家が交互にこの地位についたが、幕末王政復古に際して廃止された。近世初頭豊臣秀吉(とよとみひでよし)・秀次(ひでつぐ)父子が関白になったのはまったくの異例である。なお、前関白を太閤(たいこう)といい、関白に准ずる地位に内覧(ないらん)がある。
[橋本義彦]
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天皇の大政統理の権を補佐する職掌・地位。唐名は博陸(はくろく)・執柄(しっぺい)など。9世紀後半の藤原基経(もとつね)に始まり,藤原忠平(ただひら)が朱雀(すざく)天皇の元服を機に摂政を辞し関白とされて以降,幼帝に摂政,成人帝に関白をおくことが例となる。その地位は藤原北家,なかでも御堂(みどう)流,さらには五摂家に固定し(例外は豊臣秀吉とその養子秀次のみ),1867年(慶応3)12月の摂関・内覧廃止まで続いた。補任は詔勅によるのを原則とし,それを発した天皇一代限りの任であった。職掌の中核は,奏聞・宣下に先だって政務関係文書に目を通すこと(内覧)であるが,おのずから天皇の最終的な諮問相手としても機能した。
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…平安時代,藤原氏出身の摂政,関白が天皇に代わって,あるいは天皇を補佐して行った政治。とくに967年(康保4)冷泉天皇の践祚後まもなく藤原実頼が関白となってから,1068年(治暦4)後三条天皇が皇位につくまでの約100年間の政治形態をいう。…
…大閤とも書かれる。関白に任じられた者の子息が関白になったとき,父である前関白を呼ぶ称号。《臥雲日件録》に〈父已為関白,其子又必関白,父尚存則称大閤……〉という解釈がみられる。…
…令制の太政大臣が唐制の三師,三公と異なる点は,菅原道真が指摘したように,分掌はないが,太政官の職事として天下の政を知り行うところにある。この権能がやがて人臣摂政に移り,さらに関白の職権となった。摂政は天皇幼少の間,天皇に代わって大政を摂行する臨時的な地位であるが,関白は大政総攬の権能をもつ天皇のもとで,百官総己を職権として執政する地位であった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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