改訂新版 世界大百科事典 「太陽写真儀」の意味・わかりやすい解説
太陽写真儀 (たいようしゃしんぎ)
photoheliograph
太陽を写真観測するための望遠鏡。太陽黒点,白斑,粒状斑などの直接像や,フィルターとか分光器を使って彩層の直接像を撮影したり,太陽スペクトルの写真撮影を行う。日中は夜間に比べて気流の乱れが大きいので,1秒角以内の微細な太陽像を撮影するためにはいろいろとくふうがこらされている。(1)シーイングの良好な場所に望遠鏡を設置することが望ましい。湖岸では,湖水が太陽熱を吸収し,地面に比べて気流の乱れが少ないので,シーイングのよい場所と考えられている。アメリカのカリフォルニア州のビッグ・ベア湖内につき出たビッグ・ベア太陽観測所はその例である。(2)地表近くでは,空気のゆらぎが大きいので,高い塔の上に望遠鏡を設置する。(3)ドームによる気流の乱れをさけるため,ドームのない全天候型の望遠鏡にする。(4)望遠鏡の鏡筒内を真空にし,鏡筒内の空気のゆらぎを少なくする。大型の対物レンズを使う場合には,真空にするため対物レンズの内外圧が異なり,レンズが歪む。これをさけるためヘリウムガスを封じこめることも考えられている。ヘリウムは屈折率が小さいので,空気に比べ光路の乱れが少なくなる。京都大学大学院理学研究科付属の飛驒天文台の太陽写真儀は地上23mの塔の上に,ドームのない真空望遠鏡が設置されている。
執筆者:日江井 栄二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報