ヘリウム(読み)へりうむ(英語表記)helium

翻訳|helium

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘリウム」の意味・わかりやすい解説

ヘリウム
へりうむ
helium

周期表第18族に属する希ガス元素(貴ガス元素)の一つ。原子番号2、元素記号He。1868年8月18日にインド、マレー半島地域で観測された皆既日食において太陽紅炎の分光観測が初めて行われ、そのスペクトルに、当時の地上で知られていた元素には帰属できない線がフランスのジャンサンPierre Jules César Janssen(1824―1907)らによって発見され、その後の太陽光の分光学的研究から、それが太陽に存在する元素ヘリウム(ギリシア語の太陽heliosからの命名)によるとの推定が広く学界で支持されるようになった。1894年イギリスのラムゼーは、閃(せん)ウラン鉱の一種クレーベ石から得た気体の詳細な分光分析をイギリスのクルックスに依頼し、クルックスはそれがヘリウムと同一スペクトル線を与えることを確認した。

 ヘリウムは地球大気中におよそ5.2ppm含まれ、放射性核種のα(アルファ)崩壊によって生成するため、ウラントリウムの鉱物にも含まれている。天然ガス中に1%前後含まれることもあり、アメリカでは天然ガスから工業的にヘリウムを得ている。もっとも液化・固化しにくい物質であり、化学的にきわめて安定である。気体は理想気体に近い挙動を示す。血液に溶けにくいので酸素と混合して作業または医療吸気に利用するほか、溶接雰囲気、冷却熱媒体気球などさまざまな用途がある。安定同位体にはヘリウム3と4があり、ヘリウム4を液化して2K以下にすると、熱伝導度が非常に大きく粘度が非常に小さいヘリウムⅡ相となり、この状態では超流動現象を呈する。

[岩本振武]



ヘリウム(データノート)
へりうむでーたのーと

ヘリウム
 元素記号  He
 原子番号  2
 原子量   4.002602
 融点    -272.2℃(26気圧)
 沸点    -268.934℃
 密度    気体 0.1785g/dm3(0℃,1気圧)
 比重    液体 0.126(-269℃)
 結晶系   加圧により六方,立方と変化
 臨界温度  -267.9℃
 臨界圧   2.26気圧
 元素存在度 宇宙 2.1×109(第2位)
          (Si106個当りの原子数)
       海水 6.8×10-3μg/dm3

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘリウム」の意味・わかりやすい解説

ヘリウム
helium

元素記号 He ,原子番号2,原子量 4.002602。周期表 18族,希ガス元素の1つ。 1868年イギリスの天文学者 J.ロッキャーと E.フランクランドにより太陽の輝線スペクトル中に発見され,太陽のギリシア名ヘリオスにちなんでヘリウムと命名された。 95年にいたり W.ラムゼーはウラン鉱よりヘリウムを分離し,初めて地球上にヘリウムを見出した。大気中には 0.0005% (体積) 程度しか含まれないが,北アメリカの天然ガス中にかなり多量に含まれている。単体は無色,無臭の単原子気体。沸点-268.9℃。化学的にはきわめて安定で化合物をつくらない。水素に次いで軽く,不燃性なので気球用ガスとして使用される。液体ヘリウムは極低温を得るのに用いられる。酸素に混ぜ吸入用としても利用される。

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