日本大百科全書(ニッポニカ) 「契約曲線」の意味・わかりやすい解説
契約曲線
けいやくきょくせん
contract curve
F・Y・エッジワースによりくふうされた曲線で、一方の効用を低下させずには他方の効用を高めることが不可能な状態を示すもの。
二財2個人の財交換モデルをエッジワースの箱型図表で考えてみよう(原点をそれぞれOA、OBとし、財X、Yの量は各経済主体の原点から測る。箱型図表の各辺の長さは、二つの財の初期保有量の大きさにより決まる。この箱型図表のなかの点、たとえば点Pは、A、Bおのおのに対する財の配分を示している。すなわち、OACはAの保有するX財の量、OADはY財の量、OBEはBの保有するX財の量、OBFはY財の量を示す。Aの無差別曲線は実線で、Bの無差別曲線は点線でそれぞれ示されている。いま、点PにおいてAとBの無差別曲線が交差しているとしよう。無差別曲線は原点を離れるほど高い効用水準を示すから、AにとってPより望ましい財の配分は、点Pを通る自分の無差別曲線よりも右上方の領域にあり、BにとってPより望ましい財の配分は、点Pを通るBの無差別曲線よりも左下方の領域にある。したがって、図の青色のレンズ状の領域に属する点は、A、Bいずれにとっても点Pより好ましい財の配分を示す。それゆえ、財の再配分を通じて、A、Bはこの領域へ移動しようとするに違いない。これに対してA、Bの無差別曲線の接点Q(R)では、B(A)の効用は点Pと同一であるが、A(B)の効用は最善の状態にある。これらの点は、これ以上の移動がA、Bをともによりよい状態に導くことがありえないような点である。このような無差別曲線の接点全体からなる集合が契約曲線である。財の再配分を通して達成されるA、B2人にとって最善である位置は、この契約曲線上にある。契約曲線上の配分は、パレート最適あるいはパレート効率的であるという。契約曲線上のどの1点が選ばれるかは、AとBの交渉力などによって決定される。
)。A、B2人の[内島敏之]